平成23年全日本選抜柔道体重別選手権大会

大会直前特集

全日本柔道連盟 吉村和郎強化委員長に聞く「平成23年全日本選抜柔道体重別選手権大会」

各階級の日本一を決める「全日本選抜柔道体重別選手権大会」の魅力や、各階級の有力選手を全日本柔道連盟の吉村和郎強化委員長にお聞きしました。

今年の代表選考は総合的に判断

浅見八瑠奈選手

今回の全日本選抜柔道体重別選手権大会(以下、選抜柔道体重別)は、8月にパリで行なわれる世界柔道選手権大会の最終選考会になるわけだが、今年はアジア柔道選手権大会と開催がかぶってしまったため、一部トップ選手をそちらに出場させている。

だからこの選抜柔道体重別の結果ももちろん重要視するが、昨年の世界柔道選手権東京大会以降の、柔道グランドスラム・東京柔道ワールドマスターズ・バクー、そして柔道グランドスラム・パリ柔道グランプリ・デュッセルドルフなど一連のヨーロッパ大会の結果を、総合的に判断して代表の決定を行なう予定だ。

2012年のロンドンオリンピックを考えると、当然のことながら、今大会は非常に重要な大会であることは間違いない。今大会の結果がそのまま代表決定に直結している階級もあり、選手たちの奮闘には大いに期待したい。

山本・海老沼・西山など若手の試合に注目

浅見八瑠奈選手

60kg級は、平岡拓晃(了徳寺学園職員)が本命と言っていいだろう。 それを追うのが若手の山本浩史(日本体育大学3年)と志々目徹(日本体育大学1年)だが、決勝は平岡対山本が有力だ。

平岡は怪我でしばらく結果を出せていなかったが、柔道グランプリ・デュッセルドルフで優勝して復活の兆しを見せている。 東日本大震災後は練習ができる環境を求めて、天理大学やナショナルトレーニングセンターに出稽古に行っており、かなり気合いも入っているようだ。 しっかりと勝って、パリの世界柔道選手権大会(以下、世界選手権)につなげてほしいね。

66kg級は、世界選手権東京大会後に60s級から階級を上げた福岡正章(綜合警備保障)が、柔道グランプリ・デュッセルドルフでもきちっと優勝しており有力だ。 階級を変え、一からの出直しということで、気持ちを切り替えたのが奏功しているようだ。

昨年の世界選手権代表・海老沼匡(明治大学3年)は講道館杯全日本柔道体重別選手権大会、柔道グランドスラム・東京と福岡に連敗しており、ちょっと調子を落としている。 しかし、技術的にはいいものを持っているので、開き直るくらいの気持ちで奮起してほしいね。

73kg級は、世界選手権東京大会で優勝を果たした秋本啓之(了徳寺学園職員)がこの階級の第一人者だ。現在、熾烈な2番手争いをしている粟野靖浩(筑波大学4年)と中矢力(東海大学3年)のうち、柔道グランドスラム・東京、パリと連覇の中矢はアジア柔道選手権大会出場のため今大会は出場しない。

中矢は柔道グランドスラム・パリで粟野との直接対決を制して優位に立っているだけに、粟野は圧倒的な優勝でもしない限り厳しい状況だ。ここが正念場だろう。

大束正彦(旭化成)や若手の西山雄希(筑波大学1年)も一発の力を持っているから、彼らとの対戦からも目が離せないね。

高松・小野・穴井・鈴木のベテラン勢が最有力

浅見八瑠奈選手

81kg級の一番手は、世界柔道選手権東京大会(以下、世界選手権)3位の高松正裕(桐蔭学園高校職員)だが、1回戦であたる花本隆司(京葉ガス)も侮れない選手。簡単には勝たせてもらえないだろう。

国内では非常に強い河原正太(京葉ガス)、着実に力を付けてきている長島啓太(東海大学4年)、90s級から階級を下げた春山友紀(国士舘大学2年)らも、突出した力があるわけではないので、この階級は混戦になるだろう。

90kg級の最有力は、小野卓志(了徳寺学園職員)。世界選手権では優勝できなかったが、実力的にはまだ抜けた存在と言える。しかし、このところ怪我が多いのが気になる。

続く選手としては、西山将士(新日本製鐵)、吉田優也(東海大学3年)の名が挙がる。今回、アジア柔道選手権大会に出場する、世界選手権2位の西山大希(筑波大学2年)がこのところ実力をつけてきているだけに、西山(将)、吉田としては第一人者の小野を破ってアピールしたいところだ。寝技の強い伏兵・加藤博剛(千葉県警察)の試合も注目したい。

100kg級の優勝候補筆頭は世界選手権チャンピオンの穴井隆将(天理大学職員)。 ただ、世界選手権あたりから、勝ちを意識するあまり、彼の持ち味である投げる柔道が影をひそめ、それによって結果も出なくなってきている。 本来の一本を取る柔道ができるかが今回のポイントと言えそうだ。

その他の注目選手としては、若手の羽賀龍之介(東海大学1年)、高木海帆(東海大学2年)が挙げられる。 次代を担うエースの候補としてどのような試合を見せられるかが課題だ。

100kg超級は、世界選手権無差別級王者の上川大樹(明治大学3年)、昨年の全日本柔道選手権王者の高橋和彦(新日本製鐵)、ベテランの鈴木桂治(国士舘大学職員)らが優勝候補として挙げられる。

上川は昨年世界王者となり、良いときと悪いときの差が大きいが、一本を取る力という点では今の選手の中では群を抜いている。

昨年の全日本王者の高橋は確実に一本を取れる技がなく、鈴木も年齢的にだいぶ衰えてきたとは言え、まだまだ二人と比べても引けをとらない実力がある。

面白いのは、この春に東海大学に入学する王子谷剛志(東海大学付属相模高校3年)。1回戦で対戦する鈴木を相手にどこまでできるかに注目したい。

実力が突出している世界王者達

浅見八瑠奈選手

48kg級は有力選手がほとんど顔を揃えているが、中でも優勝候補と言えるのは、世界柔道選手権ロッテルダム大会優勝の福見友子(了徳寺学園職員)、世界柔道選手権東京大会(以下、世界選手権)優勝の浅見八瑠奈(山梨学院大学4年)だ。現在、この二人は世界でも1位、2位の実力者。

この他にも、浅見に連勝している近藤香(帝京大学4年)や、このところ怪我のために結果が出せていない山岸絵美(三井住友海上)などはトップ二人と比べても遜色のない力を持っている。2強を脅かすような試合を期待したい。

52kg級は昨年の世界選手権優勝の西田優香(了徳寺学園職員)がアジア柔道選手権大会に出場することもあり、世界柔道選手権ロッテルダム大会王者の中村美里(三井住友海上)が突出した存在と言える。 他の選手の顔ぶれを見ても、今の中村を脅かす存在は見当たらない。

若手で期待したいのは山本杏(桐蔭学園高校1年)。まだ体に力はないが、技のスピード、センスには非凡なものがある。着実に力を付けており、今大会でも注目したい選手の一人だ。

57kg級は世界選手権で優勝したことによって研究され、国際大会でも苦戦し始めている松本薫(フォーリーフジャパン)だが、国内においてはまだ抜けた存在と言える。

松本を追う選手としては宇高菜絵(コマツ)と63kg級から階級を落とした平井希(自衛隊体育学校)などが挙げられるが、いずれも対「世界」を考えると力不足と言わざるをえない。 松本を脅かすような試合を期待したいのだが…。

63kg級は第一人者の世界王者・上野順恵(三井住友海上)はアジア柔道選手権大会のため今回不出場。 今大会は世界代表の2枚目の切符争いと言えるが、はっきり言って本命不在の大混戦だ。

昨年の世界選手権で2位に入った田中美衣(ぎふ柔道クラブ24)も世界選手権後は結果を出せておらず、谷本育実(コマツ)、阿部香菜(三井住友海上)、小澤理奈(ミキハウス)とほぼ横一線の状態。

誰が上がってくるのか、予想は非常に難しいが、高校1年の田代未来(淑徳高校1年)は将来の楽しみな選手。シニアの大会でどこまでできるか注目したい。

杉本本命で横一線の重量級

浅見八瑠奈選手

70kg級は、世界柔道選手権東京大会(以下、世界選手権)3位の國原頼子(自衛隊体育学校)が国内でも海外でも安定した力を発揮しており、この階級では第一人者的存在。

今回、國原を追う若手の田知本遥(東海大学2年)をアジア柔道選手権大会に派遣しており、國原が優勝する可能性は非常に高いと言えるだろう。

それを追いかける存在としては渡邉美奈(コマツ)、上野巴恵(三井住友海上)などが挙げられるが、いずれも安定感がないのが現実だ。ぜひベテラン・國原を脅かすような選手が出てきてほしいね。

78kg級は、世界選手権代表の緒方亜香里(筑波大学2年)と岡村智美(コマツ)が今大会も有力だ。緒方は昨年の世界デビュー戦である世界選手権で3位入賞は果たしたものの、その後はあまりピリッとしない試合が続いている。もともと寝技を得意とする選手だが、勝負の怖さを知り、柔道が小さくなっているように感じる。まだ若いのだから、いろいろと工夫しながら思い切りのいい試合をしてほしい。 逆に言えば、緒方や岡村も抜け出た力があるわけではないから、他の選手にもチャンスはあると言える。

78kg超級は、昨年の世界選手権で2階級制覇を果たした杉本美香(コマツ)が本命。 杉本は技の切れは抜群だが、体が大きいわけではないし、怪我が多いこともあって安定感という点では不安がある。それだけに、今回アジア柔道選手権大会のため不出場の田知本愛(東海大学4年)とともに杉本を追いかける選手の存在が必要だ。

大学生の山部佳苗(山梨学院大学2年)や烏帽子美久(東海大学1年)、高校生の井上愛美(新田高校3年)らがどこまでできるのか、挑戦者として思い切りのいい試合を見せてほしいね。


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