大会の見どころ

柔道グランドスラム東京2016の男女各階級大会の見どころをご紹介します。
※掲載内容は2016年11月24日時点のものです。
※直近3年間の大会成績をリンクしています。
女子48s級
柔道グランドスラム東京2015
2回戦
渡名喜風南 vs A.GOMEZ
最も注目されるのは、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)銅メダリスト、柔道グランドスラム東京3連覇中の近藤亜美(三井住友海上)。リオデジャネイロ柔道競技(五輪)の代表争いをしてきた浅見八瑠奈(コマツ)が引退し、名実ともに48s級の第一人者となった近藤には、今大会ではエースとしての結果が求められることになる。
柔道グランドスラム東京 2015(女子48kg級)
柔道グランドスラム東京 2014(女子48kg級)
得意の払い腰は対戦相手に研究され、なかなか思うように決まらなくなってきたが、巴投げ、隅返し、さらにそこからの寝技の精度が高まり、確実性が増してきている。翌2017年の世界柔道選手権大会(以下、世界選手権)で2014年以来の王座を奪還するためにも、今大会ではしっかりと優勝を果たしたい。
近藤以外の日本代表は、渡名喜風南(帝京大学3年)、森崎由理江(A-LINE)、遠藤宏美(綜合警備保障:ALSOK)の3選手。講道館杯全日本柔道体重別選手権大会(以下、講道館杯)で連覇した渡名喜は、2015年の世界ジュニア柔道選手権大会(以下、世界ジュニア)で優勝している他、同年の柔道グランプリ・青島では、2013年世界女王のムンフバット(モンゴル)に一本勝ちするなど、伸長著しい選手。同い年の近藤ともどんな戦いを繰り広げるのか非常に興味深い。
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2016(女子48kg級)
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2015(女子48kg級)
世界ジュニア柔道選手権大会 2015(女子48kg級)
柔道グランプリ・青島 2015(女子48kg級)
森崎は2013年の講道館杯で優勝して一躍全国区の選手となり、今年の全日本選抜柔道体重別選手権大会(以下、選抜体重別)では浅見を破って注目を浴びた。この階級では代表最年長の25歳。
遠藤は全国中学校柔道大会、全国高等学校総合体育大会(インターハイ)柔道競技大会、世界カデ柔道体重別選手権大会(以下、世界カデ)、世界ジュニア、アジア柔道選手権大会(以下、アジア選手権)など多くのタイトルを勝ち取ってきた選手ながら、ここ一番の大会で結果を出せず、思うようなポジションを得られていない。地力のある選手だけに、今大会で自他が納得のいく実績を出し、近藤に脅威を感じさせてほしいところだ。
海外からは、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)銅メダルのガルバドラフ(カザフスタン)、アスタナ世界選手権3位のジョン・ボキョン(韓国)らが出場予定。柔道競技(五輪)後ということもあり新進の選手も多く、初戦から気の抜けない試合となりそうだ。
女子52s級
柔道グランドスラム東京2014
2回戦
志々目愛 vs E.MIRANDA
リオデジャネイロ柔道競技(五輪)銅メダリストの中村美里(三井住友海上)は無期限休養のため今大会欠場。そして、中村と長期にわたって代表争いをしてきた西田優香(了徳寺学園職員)が引退、橋本優貴(コマツ)も代表から外れ、今大会は新たな日本のエースの座を懸けた大会と言って良いだろう。
一歩リードしているのは、志々目愛(了徳寺学園職員)。昨年の柔道グランドスラム東京2015は決勝で中村に敗れて2位。今年4月の選抜体重別も決勝で中村に敗れたが、4月のアジア選手権、7月の柔道グランドスラム・チュメニと国際大会で2連勝、着実に実績を残してきた。しかし、第一シードで臨んだ11月の講道館杯では、新鋭の阿部詩(夙川学院高校1年)に「指導1」差で敗退。今大会は意地でも優勝を果たし、新たな第一人者であることをアピールしたい。
柔道グランドスラム東京 2015(女子52kg級)
全日本選抜柔道体重別選手権大会 2016(女子52kg級)
アジア柔道選手権大会 2016(女子52kg級)
柔道グランドスラム・チュメニ 2016(女子52kg級)
志々目以外の選手は、新進の選手が揃った。講道館杯で初優勝を果たした角田夏実(了徳寺学園職員)、準優勝の立川莉奈(福岡大学2年)、そして3位の阿部詩(夙川学院高校1年)。いずれも柔道グランドスラム東京は初出場となる。
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2016(女子52kg級)
角田は寝技、とりわけ関節技が得意で、巴投げや谷落としで崩し、そこから腕挫ぎ十字固めに極めるのが必殺のパターン。手足が長くパワフルな外国人選手にどこまで通用するのかに注目したい。
立川は大学に入って57s級から52s級に階級を変更、今年9月の全日本ジュニア柔道体重別選手権大会(以下、全日本ジュニア)を制すと、10月の全日本学生柔道体重別選手権大会(以下、学生体重別)で準優勝、そして11月の講道館杯でも準優勝し柔道グランドスラム東京2016の切符を手にした。
全日本ジュニア柔道体重別選手権大会 2016(女子52kg級)
全日本学生柔道体重別選手権大会 2016(女子52kg級)
66s級の弟・立川新(東海大学1年)とともに全日本ジュニアに続く姉弟優勝を狙う。もう一人の代表、16歳の新鋭・阿部は66s級の阿部一二三(日本体育大学1年)の妹で、柔道センスは兄以上と称される期待のホープ。内股、袖釣り込み腰の切れ味は鋭い。
女子57s級
柔道グランドスラム東京2015
2回戦
芳田 司 vs S.FILZMOSER
リオデジャネイロ柔道競技(五輪)銅メダリストの松本薫(ベネシード)は1年間の休養のため、今大会には出場しない。代表には、昨年の柔道グランドスラム東京2015の王者で、4月の選抜体重別も制している芳田司(コマツ)、講道館杯を連覇した石川慈(コマツ)、2014年チェリャビンスク世界選手権優勝の宇高菜絵(コマツ)、そして2016年柔道グランプリ・ブダペスト優勝の玉置桃(三井住友海上)の4選手が選ばれた。
柔道グランドスラム東京 2015(女子57kg級)
全日本選抜柔道体重別選手権大会 2016
(女子57kg級)
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2016(女子57kg級)
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2015(女子57kg級)
世界柔道選手権大会 2014(女子57kg級)
柔道グランプリ・ブダペスト 2016(女子57kg級)
中でも期待されるのは芳田。昨年から柔道グランドスラム4大会で優勝を果たしており、世界の強豪としっかり渡り合う実力を付けてきている。156pと小柄だが、内股の切れ味は特筆に値する。会社の先輩である石川、宇高、2人のベテラン、そして同い年のライバル玉置に差を付け、翌2017年の世界選手権代表レースで一歩抜け出せるかに注目が集まる。
石川は168pと長身で手足が長く、寝技の巧さに定評のある選手。受けが弱い一面もあるが、そこから抑え込んで逆転するケースも多い。柔道グランドスラムクラスの国際大会での実績がないだけに、この大会に懸ける思いは強い。
宇高の長所は、なんと言っても力強い大外刈り。一時のような圧倒的な強さはなくなったが、一発の破壊力は健在。代表最年長としての意地を見せられるか。
そして2014年の世界ジュニアで優勝し有望視されていた玉置。そのあとは足踏みが続いたが、今年は6月の柔道グランプリ・ブダペスト、8月の全日本実業柔道個人選手権大会で優勝するなど着々と実力を付けてきている。1歳下の芳田が柔道グランドスラムで華々しい結果を残しているだけに負けてはいられない。
世界ジュニア柔道選手権大会 2014(女子57kg級)
全日本実業柔道個人選手権大会 2016(女子57kg級)
海外からは、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)銀メダリストのドルジスレン(モンゴル)、IJFランキング2位、昨年の柔道グランドスラム東京2015準優勝のルセボー(フランス)、3位のキム・ジャンジ(韓国)など有力選手が多数エントリーしており、日本代表にとって厳しい戦いとなりそうだ。
女子63s級
平成28年選抜体重別 決勝戦
能智亜衣美 vs 津金恵
リオデジャネイロ柔道競技(五輪)日本代表の田代未来(コマツ)は出場せず。柔道競技(五輪)でもメダルを獲れなかった63kg級は今大会においても苦戦が予想される。 日本代表に選出されたのは、今年11月の講道館杯の上位4選手。優勝した能智亜衣美(筑波大学3年)、準優勝の嶺井美穂(桐蔭横浜大学1年)、3位の津金恵(筑波大学3年)、荒木穂乃佳(兵庫県警察)だ。
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2016
(女子63kg級)
能智は2015年の講道館杯で優勝して脚光を浴びると、今年今年4月の選抜体重別では、準決勝で第一人者の田代を支え釣り込み足「技あり」で破り、決勝でも大学の同級生・津金を出足払い「有効」で破って優勝。講道館杯優勝がフロックでないことを証明して見せた。柔道競技(五輪)代表にはそれまでの実績から田代が選ばれたが、能智は7月の柔道グランドスラム・チュメニで優勝、さらに11月の講道館杯では大会連覇を成し遂げ、今最も波に乗る選手と言って良い。
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2015(女子63kg級)
全日本選抜柔道体重別選手権大会 2016(女子63kg級)
高校1年生のときに講道館杯準優勝、2年のときには世界ジュニア選手権大会を制し、期待のホープとして注目を集めた嶺井は、ケガでしばらく戦線を離脱していたが、約1年ぶりの復帰戦となった11月の講道館杯で決勝に進出。惜しくも能智に「指導1」で敗れたものの、復調の兆しを見せている。今大会で完全復活となるか。
2012年の柔道グランドスラム東京2012で、当時17歳の若さで史上最年少優勝して注目された津金だが、そのあと、決勝までは進むも優勝を逃すという大会が続いていた。しかし、10月の学生体重別で優勝を果たし調子は上向き。4年ぶりのビッグタイトルを狙う。
全日本学生柔道体重別選手権大会 2016(女子63kg級)
7月の全日本ジュニアを制し、講道館杯で3位入賞して大きなチャンスをものにした荒木も、持ち前の粘り強さで飛躍を期す。 海外から出場を予定している選手で最有力は、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)金メダリストのトルステニャク(スロベニア)。若手揃いの日本人選手には胸を借りるつもりで思い切り戦ってほしい。
全日本ジュニア柔道体重別選手権大会 2016(女子63kg級)
女子70s級
柔道グランドスラム東京2015
準々決勝
新井千鶴 vs M.PEREZ
リオデジャネイロ柔道競技(五輪)金メダリストの田知本遥(綜合警備保障:ALSOK)は無期限休養のため出場せず。この階級も、田知本に代わる第一人者の座を競う戦いと言って良いだろう。
候補の一番手であり、今大会で最も期待されているのが新井千鶴(三井住友海上)。新井は、昨年のアスタナ世界選手権の代表となったもののメダルに届かず(5位)、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)代表を田知本と最後まで争ったが、選抜体重別での直接対決で敗れ涙を飲んだ。
そのあと、7月の柔道グランドスラム・チュメニで優勝するも、再出発の大会というべき講道館杯では2回戦で敗退。実績で今大会の代表に選ばれた。出鼻をくじかれた形だが、この柔道グランドスラム東京2016で2年連続3度目の優勝を果たし、再度、日本の第一人者の実力を見せたい。持ち前の思い切りの良さを出せるかがポイントと言えそうだ。
柔道グランドスラム・チュメニ 2016(女子70kg級)
昨年準優勝の大野陽子(コマツ)は講道館杯準優勝で再び代表切符を獲得。アグレッシブな柔道が身上の選手だが、講道館杯決勝では新添左季(山梨学院大学2年)に大外刈りで一本負けを喫し連覇を逃した。昨年の柔道グランドスラム東京2015では準優勝を果たしており、今年はそれ以上を目指している。
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2016(女子70kg級)
柔道グランドスラム東京 2015(女子70kg級)
今年8月の全日本ジュニアで優勝を果たし、11月の講道館杯も制して一気に代表に躍り出た新進の新添は、内股、大外刈りなどに破壊力のある有望株。今大会で大暴れの予感も。もう一人の代表は、講道館杯の2回戦で新井に土を付け3位に入った前田奈恵子(JR東日本)。粘り強い柔道で結果を残したい。
全日本ジュニア柔道体重別選手権大会 2016(女子70kg級)
海外の有力選手としては、IJFランキング6位のキム・ソンヨン(韓国)とフランスのポスヴィトら。キムは柔道グランドスラム東京2013で3位入賞、14年のアジア大会決勝では新井から横落としで「有効」を取って金メダルを獲得している。組み際の技には警戒が必要だ。
女子78s級
2015年アスタナ世界選手権 決勝
梅木真美 vs A.VELENSEK
リオデジャネイロ柔道競技(五輪)で初戦(2回戦)敗退した梅木真美(環太平洋大学4年)にとって再起の大会となるこの柔道グランドスラム東京2016。リオデジャネイロ柔道競技(五輪)では、緊張のせいか動きに精彩を欠き、「指導」を先行されて焦って強引に技を掛けて返されるという最悪の展開で、前年のアスタナ世界選手権で金メダルに輝いた選手とは思えない残念な内容だった。
世界柔道選手権大会 2015(女子78kg級)
そもそも梅木の長所は組み手の巧さや技の切れではなく、しっかり組んで技を仕掛け続け、スタミナと粘り強い寝技で勝負するところ。まだ21歳と若く、実力的にはまだまだ発展途上の選手。今大会ではチャレンジャーとして果敢に挑む姿を見せてほしい。
その他の代表は、4月の選抜体重別で2年ぶり3度目の優勝、さらに11月の講道館杯も4年ぶりに制した佐藤瑠香(コマツ)と、2015年度の講道館杯2位の高山莉加(三井住友海上)、そして吉村静織(三井住友海上)の負傷欠場によりチャンスが回ってきた2011年パリ世界選手権準優勝の緒方亜香里(了徳寺学園職員)。
全日本選抜柔道体重別選手権大会 2016(女子78kg級)
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2016(女子78kg級)
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2015(女子78kg級)
佐藤は2010年、13年、14年と世界選手権の代表に選ばれるも、メダルには届いていない。キャリア的にはベテランの域も、年齢的にはまだ24歳。再度、世界を狙えるか。この柔道グランドスラム東京2016にかかっていると言って良いだろう。
社会人になり着実に力を付けてきている高山は、7月の柔道グランドスラム・チュメニでも優勝を飾っており、さらなる飛躍が期待されている。緒方はケガなどもあり、ここ2年ほどタイトルから遠ざかっている。再び世界を目指すためにも、この柔道グランドスラム東京2016で、2011年以来の優勝を果たし復活の狼煙を上げたい。
柔道グランドスラム・チュメニ 2016(女子78kg級)
外国人選手で注意が必要なのはジョー(ハンガリー)とアポテカ(スロベニア)、パク・ユジン(韓国)あたり。トップ選手のエントリーは少ないが、この階級の外国人はパワフルな選手が多く、ランキングが低い選手でも侮れない。とは言え、日本代表が上位を独占するような躍進に期待したい。
女子78s超級
2015年アスタナ世界選手権
3位決定戦
山部佳苗 vs K.CHIBISOVA
日本代表は、山部佳苗(ミキハウス)、朝比奈沙羅(東海大学2年)、素根輝(南筑高校1年)、稲森奈見(三井住友海上)の4人。
リオデジャネイロ柔道競技(五輪)銅メダリストの山部は、柔道グランドスラム東京では2013年の準優勝が最高で、ここまであまり良いパフォーマンスを見せられていない。女子78kg超級の第一人者として、柔道競技(五輪)メダリストとして、凱旋大会でもある今大会を優勝で飾りたいところだ。切れ味鋭い足技と豪快な払い腰の炸裂に期待したい。
講道館杯で4連覇の快挙を成し遂げた朝比奈は、175cm、128kgの大きな体躯を利しての払い腰に抜群の破壊力を持つ。柔道グランドスラム東京では2014年の準優勝が最高。そろそろ柔道グランドスラムクラスの大会での実績を残したい。
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2016(女子78kg超級)
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2015(女子78kg超級)
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2014(女子78kg超級)
講道館杯ではまったく振るわず3位入賞もできなかった稲森は、2014年、2015年柔道グランドスラム東京連覇の実績から代表に入った。165cm、110kgと78kg超級としては小さい選手だが、全身で掛けるような大内刈りは大きい相手も物ともしない。果たして3連覇なるか。
柔道グランドスラム東京 2015(女子78kg超級)
柔道グランドスラム東京 2014(女子78kg超級)
講道館杯で決勝進出を果たし、代表入りを果たした高校1年生の素根がシニアの大会でどのような試合をするのかも非常に興味深い。全国中学校柔道大会2連覇、2015年は世界カデで優勝し、今年は全日本ジュニアで王者に輝いている。受けのやわらかさ、寝技の強さは超高校級。東京柔道競技(五輪)の有力候補として注目を集めている。シニアの国際大会デビューとなる柔道グランドスラム東京で、外国人選手や日本のトップ選手を相手にどのような試合をするのか、とても楽しみだ。
全日本ジュニア柔道体重別選手権大会 2016(女子78kg超級)
実績的に世界トップクラスの外国人選手の参加はないものの、ロシアやブラジル、中国にはパワフルな選手が多く、現時点で無名だからと言って油断はできない。

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