2009年ロッテルダム世界柔道選手権大会

29日(土)の見どころ

男子90kg級階級変更で実力発揮!好調小野が金メダルを狙う

小野卓志小野卓志(了徳寺学園職)は、かつては81kg級の選手。2005年の全日本選抜体重別選手権大会やアジア柔道選手権大会では優勝を果たしていたが、その後減量に苦しみ、気持ちが守りに入って負けることも多かった。2008年北京オリンピックのあと90kg級に転向。2008年12月の嘉納杯東京国際大会を制し、復活をアピールした。今は「腹一杯食べ、十分に練習できるので、これまでのようにスタミナを心配したり、気持ちが消極的になることはない」と言い切る。実際、その柔道も以前と比べると攻撃的で、力強くなっている。2月のグランドスラム・パリは2位だったが、5月のグランドスラム・モスクワは優勝。現在、好調を保っている。

右内股の威力は健在。適正体重を得て2005年カイロ世界選手権(81kg級)での3位入賞以上の成績を期待されている。大外刈、大内刈も得意。29歳と既にベテランの域に入るが、気持ちは若い。外国人選手に負けない181cmの長身で、奥襟を取られて頭を下げさせられることは少ない。先手必勝が課題だ。

この階級は強敵、難敵揃い。2009年ヨーロッパ選手権大会金メダリストのカズシオナック(ベラルーシ)、3位のママドフ(アゼルバイジャン)、2008年北京オリンピック、2007年リオデジャネイロ世界選手権大会金メダリストのチレキゼ(グルジア=100kg級に上げる可能性も)、2004年アテネオリンピック81kg級金メダリスト、怪力で移腰を得意とするイリアデス(ギリシャ)。その他に今年2月のグランドスラム・パリ、グランプリ・ハンブルグ連覇のダフレビーユ(フランス)、ペルシン(ロシア)、フィジンガー(オランダ)などがおり、いずれも長身でパワフル。無名選手でも気が抜けないのがこの階級だ。

女子70kg級初代表の渡邊、一発の威力を魅せられるか

渡邊美奈新代表・渡邊美奈(コマツ)が、女王・上野雅恵(三井住友海上)に代わり、世界の頂点に立つことができるかが注目される。
この階級は2004年アテネ、2008年北京とオリンピックを連覇した上野雅恵が第一人者として長い間君臨してきた。彼女の引退により空いた代表の座を射止めたのが、23歳の渡邊だ。力強い背負投、袖釣込腰は、はまれば「一本」を取れる必殺の威力を持つ。

「今回の世界選手権大会はロンドンオリンピックへの通過点。オリンピックで勝つためにもロッテルダムはぜひ優勝したい」と静かに燃える渡邊は、3月のグランプリ・ハンブルグ優勝以降、体調も良さそうだ。技の切れは日本の代表の中でもトップクラス。あとは組み手をいかに早く自分の有利な形にできるかが課題と言える。

渡邊は2007年リオデジャネイロ世界選手権大会金メダリストのエマヌ(フランス)、2008年欧州選手権大会銀メダリストのイグレシアス(スペイン)、2009年グランプリ・ハンブルグ銅メダリストのスラカ(スロベニア)らの実力者にグランプリ・ハンブルグで勝っており、十分に優勝を狙える力を持っている。
フランスはエマヌが出てくるのか、3月のグランドスラム・パリ、5月のヨーロッパ選手権大会を制し、現在、ランキング1位のデコスが出てくるのか不明だが、どちらが出てきても優勝候補であることに間違いない。デコスは左組みから小内刈、小外刈、出足払が得意。長いリーチで朽木倒も狙う。2008年北京オリンピック銀メダリストのエルナンデス(キューバ)、2007年リオデジャネイロ世界選手権大会銀メダリストのラウジー(アメリカ)、2009年グランドスラム・パリ銅メダル、ヨーロッパ選手権大会銀メダリストのシエレ(ドイツ)も有力選手。2008年ヨーロッパ選手権大会金メダリストのスカピン(イタリア)、北京オリンピック銅メダリストのボッシュ(オランダ)も国際大会上位入賞の常連だ。2009年グランプリ・ハンブルグ、ヨーロッパ選手権大会ともに銅メダルのジャスケ(ベルギー)やグランドスラム・パリ銅メダリストの竇書梅(中国)も要注意。

女子78kg級“3度目の正直”中澤の狙うのは金メダルのみ!

中澤さえ中澤さえ(綜合警備保障)はこれまで世界の舞台では2005年のカイロ世界選手権大会、2007年のリオデジャネイロ世界選手権大会と2回出場して2回とも準優勝。「さぁ金メダル」という昨年の北京オリンピックはケガによる稽古不足がたたり、スタミナが続かずに初戦敗退の屈辱を味わった。ロッテルダム世界選手権大会は最終選考会である全日本選抜体重別大会に負けてのいわゆる“負け代表”。それだけにいろいろな意味で大会に懸ける思いは強い。

長身からの大外刈、小外刈には威力があり、一発引っかければ誰でも飛ぶ。「世界は3度目なので、3度目の正直にしたい」と言う。中澤の課題は組み手と寝技と言われるが、それよりも2008年3月に負った左ヒザのケガをかばう気持ちをいかに吹っ切るかが最大の課題と言えそうだ。もうほとんど治っていると本人は言うが、まだ、どこかにかばう心があるのか、以前に比べ思い切りの良い攻撃が少なくなっている。本人が言う「自分との戦い」に勝利することが、金メダル獲得の最大のポイントとなる。

ライバルは多士済々。今年のグランドスラム・パリ、グランプリ・ハンブルグを制した腕力のあるルブラン(フランス)は現在、ランキング1位。グランプリ・ハンブルグ決勝では、このルブランに中澤は「技あり」を取られて負けている。フランスには安定した強さのポサマイもおり、どちらが出てくるのかは不明。2008年北京オリンピック金メダリストの楊秀麗(中国)は5月のグランドスラム・モスクワで優勝しており、ランキングも2位、優勝候補の一人だ。この他、有力選手としては2009年ヨーロッパ選手権大会金メダリストのサンミゲル(スペイン)、同銀メダリストのプリシェチェバ(ウクライナ)、2008年北京オリンピック銀メダリストのカスティージョ(キューバ)、銅メダリストの鄭敬美(韓国)などが挙げられる。

各国の代表が未決定か未公表のため、選手は推測です。ランキングは2009年6月13日現在のIJFワールドランキングです。


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