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メダリストインタビュー

  

篠原信一

 

シドニーオリンピックで銀メダルを獲得し、現在、男子ナショナルチーム監督の篠原信一氏に、大会での思い出、指導者としての思い、オリンピック代表選手へのメッセージをお伺いしました。

篠原信一氏
 

オリンピックへの思い

オリンピックへの思い

実は、子供の頃からほとんどオリンピックを見たことがなくて、見たのはたしかアトランタオリンピックが初めてくらい。アトランタも後輩の野村忠宏の試合しか見ていないです。他の選手みたいに、子供の頃から「オリンピックに出ることが目標」みたいなのはなかったですし、オリンピックに対する意識は、かなり違うかもしれないですね。

私自身がオリンピックに出ることを意識し始めたのは大学3年くらい。全日本学生柔道体重別選手権大会で優勝した頃だったと思います。学生チャンピオンになって、もしかしたら俺も全日本柔道選手権大会世界柔道選手権大会、オリンピックに出られるんじゃないかと。それまではオリンピックのことなんて考えたこともなかったです。

自分が柔道を始めたのは中学生からですが、特に柔道が好きというわけではなくて、無理やりやらされていた感じで、高校時代も先生が怖くて仕方なくやっていたし、大学時代も最初の頃は先輩が怖くてやっていたという感じでした。それが、学生チャンピオンになり、世界柔道選手権大会の代表になり、全日本柔道選手権大会で優勝して、オリンピックの代表になってと、段階を踏んでいく間に、徐々に意識するようになりました。

独特な雰囲気のオリンピック

独特な雰囲気のオリンピック

その頃は、正直マスコミが嫌いで、日本代表になったときも、いろんなマスコミから、「最重量級の代表は、日本を背負うわけですが、目指すメダルは?」みたいなことを、何度も何度も聞かれて。なんとか「金」と言わせようとする、そのマスコミの異常とも思える反応が嫌で仕方なかった。

「またかよ、ほっといてくれよ」といつも思っていました。自分では「自分の目標達成のために金メダルを獲るんだ」という気持ちで頑張っていましたからね。ただ、周囲の人たちや、ファンの皆さんの応援というのは嬉しかったです。

4年に一度の世界的大イベントということで、マスコミも周囲の反応も全然違うんだと、それが当たり前なんだと、今にしてみれば分かりますけど、現役の頃は、マスコミに囲まれるたびに、「また同じことを言わなきゃいけないのかよ」と、そんな気持ちでした。

実際、オリンピックの雰囲気というのは凄かったですよ。全日本柔道選手権大会もかなり独特ですが、全日本とも違うし、世界柔道選手権大会や国際大会とも全然違う雰囲気でした。マスコミの多さ、注目度、そういうものすべてひっくるめて、一種独特の世界だったと思います。

しかし、畳に上がる前は、その異様な雰囲気をすごく感じましたが、上がってしまえばあとは「やるしかない」と開き直ることができ、試合も回を重ねるごとに落ち着いてできました。

記憶ではなく記録に残ることが大事

記憶ではなく記録に残ることが大事

パリ世界柔道選手権大会決勝のドゥイエ戦であの様な負け方をして(世紀の大誤審として注目されたが、ドゥイエの内股を篠原が絶妙な内股透で返すも、篠原のポイントが認められず、ドゥイエの内股が「有効」となり、篠原は決勝で敗退)、そういう意味で注目されましたし、周囲から「誤審で負けてかわいそう」みたいに言われたり、(誤審に対して一切の批判をせず「自分が弱いから負けた」と語ったことを)マスコミにも美談みたいにしてもらったりしたんで、当時は金メダルを獲れなかったショックみたいなものもそれほど感じませんでした。

でも、それから何年も経つと、残るのはやはり記憶ではなく記録なんですよ。今の子供たちに「篠原って銀メダルなんだ、金メダル獲ってないんだ」と言われたら、「いやいや、実はその試合はね…」なんて説明できないですからね(笑)。

やはり、オリンピックというのは、結果を残さなくてはダメ。金メダルという目標を持って、厳しい稽古をやった分の結果をしっかりと残さないと。

闘うのは選手本人

闘うのは選手本人

自分は今、ナショナルチームの監督をしているわけですが、選手たちにも、努力に見合う結果を残してほしいですね。オリンピックというのは誰でも出られるわけじゃないし、出られるとしても、ほとんどの選手は、一生に一度しかチャンスがないわけです。

その大舞台で、勝って記録に残る選手になってほしい。勝たなければ、それまで金メダルを獲るためにした努力は、無駄にはならないが、後悔になると思います。悔いを残さないために、最後の最後まであきらめずに頑張ってほしいですね。

なんだかんだ言っても戦うのは選手本人ですから、自分は、選手が試合当日、最高の状態で挑めるよう、サポートしていきたいと思っています。

 

インタビュー:2012年4月

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