九州柔道協会会長 藤田弘明氏インタビュー
2017年7月21日に開幕する西日本新聞創刊140周年記念/第91回平成29年度金鷲旗高校柔道大会(以下、金鷲旗)。勝ち抜き戦で行なわれる歴史ある大会です。今回は金鷲旗直前インタビューとして、九州柔道協会会長の藤田弘明氏に金鷲旗にまつわる様々なお話を伺いました。
金鷲旗高校柔道大会に思うこと

金鷲旗高校柔道大会(以下、金鷲旗)は勝ち抜き戦ということで、高校生にとっては大変な大会です。大将まで勝ち抜かないといけない。副将で引き分けてしまうとそれで終わり。大将戦になって初めて雌雄を決することができます。
一般的に強豪校の大将は2日目にやっと出てくるのですが、1日目から出てきて優勝してしまったのが、1975年(昭和50年)第49回金鷲旗に東海大学付属相模高校(以下、東海大相模高校)の生徒として出場した山下泰裕さんでした。昭和50年、当時はまだ特急列車の時代で飛行機はありませんでした。「大会の優勝旗が関門海峡を渡った」と大きな話題になったのを覚えています。
高校生の皆さんがこの大会を経験することで、将来の大きな世界大会のためになると、私は思います。大将に行き着くまでに力を使わなければならないので、高校生にとっては肉体的・精神的に困難な大会ですが、これまでに世界チャンピオンになった日本選手はそのほとんどが金鷲旗を経験してきました。やはり世界のトップを狙うのであれば、この金鷲旗はひとつの原点なのではないでしょうか。
高校生の皆さんにはこの大会でぜひ頑張って頂きたい。2020年の東京柔道競技(五輪)に向けてまだ3年あります。今は高校生でもその頃には大学生の年齢になり、東京柔道競技(五輪)に出場できる可能性も出てくるので、期待したいですね。
大会の見どころ

山下さんが活躍した頃は、九州の高校も強く、九州勢が遠来勢を迎え撃つのが大会の構図でした。2017年は関東勢が強いと思います。神奈川県の桐蔭学園高校、東京都の日体荏原高校、愛知県の大成高校。このあたりが男子の上位に入ってくるのではないでしょうか。有力校が大会を盛り上げてくれると思います。
一方で、女子は九州勢に遠来勢を迎え撃つ態勢ができていると感じています。敬愛高校や南筑高校には非常に良い選手が揃っているので、注目しています。
大会注目選手

今、福岡では柔道の強化一貫指導を行なっています。小学5、6年生の男女合わせて40人程を強化指定選手に選び、一貫して指導していく。その中で出てきた選手が南筑高校の素根輝選手です。金鷲旗は勝ち抜き戦ですから、強い大将が1人いれば勝てる可能性が高くなります。
そういった意味では2017年第39回全国高等学校柔道選手権大会(以下、高校選手権)で優勝した夙川学院高校が相手でも勝負になると思います。女子は高校選手権も、全国高等学校総合体育大会 (インターハイ)柔道競技大会も点取り戦です。勝ち抜き戦の金鷲旗では結果に差が出てくるでしょうね。
素根選手は立ち技良し、寝技良し、の非常にバランスが良い選手です。足技から体落にいき、相手が跪けばそこから押さえ込んでいける。さらには精神面も強く、良い根性もしています。将来の日本代表候補として大事に育てていくべき選手だと感じています。
選手たちへのメッセージ

よく世界の舞台には魔物がいると言われますが、これは精神面に重圧がかかってきても、普段の力が出しきれるかどうかの問題だと思います。
私が強化委員長を務めた2000年オーストラリアシドニー柔道競技(五輪)のとき、日下部基栄さんが3位になりました。
日本人の悪い癖として、負けるとすぐうつむき加減になって肩を落として歩いてくることがあります。そんなとき、胸を張る訳ではないですが、ちょっと会釈して帰ってくるくらいの余裕があっても良いと思うのです。うつろな目で下を向いて、肩を落として帰ってくるのはかっこ悪い。日下部さんは涙をボロボロと流してはいるものの、前をまっすぐ向いて歩いてきました。やっぱりこのような選手が入賞できるのです。
精神的に強くなければ潰されてしまい、その結果、自分の柔道を忘れるのだと思います。本人には重圧もかかりますし、口で言うのは簡単かもしれませんが、自分の練習量に勝るものはないという強い気持ちでこの金鷲旗を戦って欲しいと思いますね。
インタビュー:2017年7月上旬

Facebook
X(エックス)
Youtube
Instagram




















