大会の見どころ

柔道グランドスラム東京2015の男女各階級大会の見どころをご紹介します。
※掲載内容は2015年11月24日時点のものです。
男子60kg級
2015年アスタナ世界選手権
3位決定戦
志々目徹 vs F.KITADAI
現在、この階級における日本の第一人者は志々目徹(了徳寺学園職員)だが、志々目は2015年アスタナ世界柔道選手権大会(以下、世界選手権)では3位入賞にとどまっており、絶対的な第一人者とは言い切れない。現時点の国内トップ4が出場するこの大会で優勝を果たし、名実ともに第一人者となりたいところだ。得意の内股で頂点を狙えるかに注目が集まる。
世界柔道選手権大会 2015(男子60kg級)
一方、この大会で王座返り咲きを狙うのが高藤直寿(東海大学4年)。2013年リオデジャネイロ世界選手権で優勝を果たし、世界でもダントツの強さを誇っていたが、2014年チェリャビンスク世界選手権で3位、今年の全日本選抜柔道体重別選手権大会(以下、選抜体重別)では初戦敗退を喫し、2015年アスタナ世界選手権日本代表の座を逃すこととなった。
世界柔道選手権大会 2014(男子60kg級)
世界柔道選手権大会 2013(男子60kg級)
しかし、2015年5月の柔道ワールドマスターズ・ラバトで優勝を飾り、マスターズ大会連覇、さらに10月の柔道グランドスラム・パリでも優勝を果たし、復権の兆しを見せている。今大会で再び第一人者返り咲きとなるか。相手に密着し、抱え上げて投げる「高藤スペシャル」に注目。
柔道グランドスラム・パリ 2015(男子60kg級)
柔道ワールドマスターズ・ラバト2015(男子60kg級)
また、2015年4月の選抜体重別で志々目を破って優勝したものの、世界選手権代表には届かなかった木戸慎二(パーク24)にも注目だ。7月の柔道グランドスラム・チュメニで大会連覇を果たしており、今大会の結果次第では、来年の五輪日本代表の可能性も十分にあると言って良いだろう。
全日本選抜柔道体重別選手権大会 2015(男子60kg級)
柔道グランドスラム・チュメニ 2015(男子60kg級)
柔道グランドスラム・チュメニ 2014(男子60kg級)
2015年講道館杯全日本柔道体重別選手権大会(以下、講道館杯)で2年連続3度目の優勝を果たした山本浩史(綜合警備保障:ALSOK)は、講道館杯では、先にポイントを取られることが多かったが、得意の内股でことごとく逆転勝ちし、切れ味の健在を見せつけた。代表争いでは土俵際にいるが、ファンを魅了する一本柔道に期待したい。
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2015(男子60kg級)
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2014(男子60kg級)
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2010(男子60kg級)
男子66kg級
2015年アスタナ世界選手権 2回戦
海老沼匡 vs D.MA
最注目選手は、2011年、2013年、2014年世界選手権3連覇の海老沼匡(パーク24)。2015年のアスタナ世界選手権では、3回戦で不覚を取ったものの、実力は世界トップであることに変わりはない。
世界柔道選手権大会 2014(男子66kg級)
世界柔道選手権大会 2013(男子66kg級)
世界柔道選手権大会 2011(男子66kg級)
海老沼の魅力はなんと言っても技の切れ。内股、背負い投げ、袖釣り込み腰、大内刈りなど、多彩な技で常に一本を狙い続ける攻撃柔道が特徴だ。
2014年の本大会では、新鋭・阿部一二三(神港学園高校3年)に大激戦の末に敗れ、3位決定戦でも高市賢悟(東海大学4年)に一本負けを喫しているだけに、今年は第一人者として真の実力を見せ、来年の五輪代表に大きな一歩を踏み出したいところだ。2014年チェリャビンスク世界選手権、2015年アスタナ世界選手権ともに第2代表として出場したが、まだメダルには届いていない。得意技は背負い投げと寝技。1枠しかない来年の五輪代表の座を得るために、負けは許されない。
2011年、2013年と本大会を制している高上智史(旭化成)は、2014年は今ひとつ振るわなかったが、2015年に入り5月のアジア柔道選手権大会(以下、アジア選手権)、7月の柔道グランドスラム・チュメニで連勝。10月の柔道グランドスラム・パリでは3位だったものの、復調の兆しを見せている。
柔道グランドスラム東京 2013(男子66kg級)
柔道グランドスラム東京 2011(男子66kg級)
柔道グランドスラム・パリ 2015(男子66kg級)
柔道グランドスラム・チュメニ 2015(男子66kg級)
アジア柔道選手権大会 2015(男子66kg級)
また、2015年11月の講道館杯で優勝し、いま波に乗る竪山将(鹿屋体育大学4年)も注目選手の一人。ダークホースとなる可能性も十分にある。
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2015(男子66kg級)
男子73kg級
2015年アスタナ世界選手権 決勝
大野将平 vs 中矢力
73s級は2010年以降の世界選手権を、日本がすべて制しており、絶対的な自信を持つ階級である。
2013年リオデジャネイロ大会、2015年アスタナ大会王者の大野将平(旭化成)、2011年パリ大会、2014年チェリャビンスク大会優勝の中矢力(綜合警備保障:ALSOK)、そして、2010年東京大会を制した秋本啓之(了徳寺学園職員)。
今大会には、タイプの異なるこの3人の世界王者が揃って出場を果たす。
世界柔道選手権大会 2015(男子73kg級)
世界柔道選手権大会 2014(男子73kg級)
世界柔道選手権大会 2013(男子73kg級)
世界柔道選手権大会 2011(男子73kg級)
世界柔道選手権大会 2010(男子73kg級)
なかでも注目は、今年2015年の世界選手権を制した大野だ。重量級の選手を相手にしても組み負けない組み手の強さ、そして切れ味、威力ともに史上屈指と言われる内股、大外刈りは世界が絶賛する。
一方、中矢の柔道は粘りの柔道。大野のように立ち技の切れはないものの、先手を取られても焦ることなく、じっくりと相手を追い込んでいき、最後は得意の寝技で仕留めるのが必勝のパターンだ。
そして全盛期を過ぎたとは言え、侮れない実力を持つのが秋本。2014年の本大会決勝では、粘りの柔道で大野から勝利をもぎ取り健在をアピール。2015年10月の柔道グランドスラム・パリでも世界ランキング1位のオルジョフ(アゼルバイジャン)に勝って優勝しており、五輪出場に執念を見せる。
柔道グランドスラム・パリ 2015(男子73kg級)
柔道グランドスラム東京 2014(男子73kg級)
4人目の代表、橋本壮一(パーク24)は2015年の選抜体重別で大野と秋本、2人の世界チャンピオンを破って優勝。11月に開催された柔道グランプリ・青島でも優勝を飾っており、今大会で優勝することになれば、代表候補へ急浮上という可能性もゼロではない。
柔道グランプリ・青島 2015(男子73kg級)
全日本選抜柔道体重別選手権大会 2015(男子73kg級)
男子81kg級
2015年アスタナ世界選手権 決勝
永瀬貴規 vs L.PIETRI
2013年の本大会で、その年の世界選手権2位のチリキシビリ(ジョージア)と世界選手権王者のピエトリ(イタリア)を破って優勝を果たし、シニアの国際大会で初のビッグタイトルを獲得すると、一気にこの階級の日本第一人者に浮上したのが永瀬貴規(筑波大学4年)である。
2014年の世界選手権ではメダル獲得はできなかったが、2015年8月のアスタナ世界選手権では、準決勝で強豪のチリキシビリ、決勝でピエトリを破って初優勝。日本人として81s級初の世界王者に輝いた。今回、大飛躍の起点となった本大会に、世界チャンピオンとして臨む永瀬。3連覇すれば、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)への出場権を大きく引き寄せることになる。
世界柔道選手権大会 2015(男子81kg級)
柔道グランドスラム東京 2014(男子81kg級)
柔道グランドスラム東京 2013(男子81kg級)
この階級の日本2番手は丸山剛毅(パーク24)。今年2015年の世界選手権は、個人は代表から外れたものの、団体で出場し日本の優勝に貢献した。今年5月の柔道グランドスラム・バクーで3位入賞。今大会で永瀬との差を縮めることができるかが見どころである。
柔道グランドスラム・バクー 2015(男子81kg級)
また、長島啓太(日本中央競馬会)は2013年リオデジャネイロ世界選手権の日本代表。世界選手権では初戦敗退の苦汁をなめたが、今年に入り、アジア選手権で、ロンドン五輪金メダリストのキム・ジェボム(韓国)を破って優勝を果たしている。2015年講道館杯で優勝して最後の出場キップを手にした海老泰博(旭化成)とともに、永瀬を脅かすような活躍に期待したいところだ。
アジア柔道選手権大会 2015(男子81kg級)
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2015(男子81kg級)
男子90kg級
2015年アスタナ世界選手権
敗者復活戦
ベイカー茉秋 vs K.TOTH
90kg級の日本代表は、2015年アスタナ世界選手権3位のベイカー茉秋(東海大学3年)、同世界選手権団体戦代表の吉田優也(旭化成)、2010年、11年世界選手権銀メダルの西山大希(新日鐵住金)、そして、今年2015年の講道館杯優勝を勝ち取った大辻康太(日本エースサポート)の4名。
世界柔道選手権大会 2015(男子90kg級)
世界柔道選手権大会 2011(男子90kg級)
世界柔道選手権大会 2010(男子90kg級)
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2015
(男子90kg級)
現在、日本の第一人者であるベイカーの持ち味は何と言っても粘り強さ。長身でパワフルな外国人選手を相手に、組み負けながらも、粘り腰を見せてポイントを上げることのできる稀有な選手だ。
171pとこの階級ではかなり小さい吉田は、組み手の巧さと切れ味鋭い体落としが武器。大きな選手も苦にしない力強さを持っている。
また、2014年のこの大会で準優勝を果たし、払い腰や大外刈りなど、一発の威力に定評がある西山にも期待がかかる。
柔道グランドスラム東京 2014(男子90kg級)
そしてこれまで強化指定選手に指定されていなかったにもかかわらず、2015年講道館杯を制した大辻にも注目だ。今大会は初めてと言って良いビッグチャンス。果たしてこのチャンスを活かせるか。
外国人選手のレベルが高いこの階級は、日本にとって非常に厳しい戦いが予想される。国内の代表争いとしては2015年アスタナ世界選手権3位のベイカーの背中を、吉田、西山の二人が追いかけるという構図だが、ベイカーが絶対的にリードしているという訳ではないので、今大会の内容次第では立場の逆転も十分にあり得る、激戦必至の階級と言えるだろう。
男子100kg級
2015年アスタナ世界選手権 決勝
羽賀龍之介 vs K.FREY
2014年のチェリャビンスク世界選手権には、「代表派遣なし」という屈辱的な扱いを受けた100s級。しかしそれがカンフル剤となったのか、今年のアスタナ世界選手権では、羽賀龍之介(旭化成)が得意の内股を駆使して見事優勝し、最高の形で雪辱を果たした。
世界柔道選手権大会 2015(男子100kg級)
とは言え、外国人選手の層が厚く、強豪ひしめくこの階級は、日本にとって厳しい階級であることに変わりはない。
日本代表は、世界チャンピオンの羽賀の他は、高木海帆(日本中央競馬会)、ウルフアロン(東海大学2年)、下和田将平(京葉ガス)。
2010年、2011年の世界選手権代表ながらそこで実績を残せず、その後ケガで長期にわたり低迷していた高木は、2015年4月の選抜体重別で羽賀を破って優勝したものの、近年の実績から代表には選出されなかった。とは言え、5月のアジア選手権でも優勝を果たしており、復調の兆しを見せている。今大会を捲土重来のきっかけとすることができるか注目したい。
アジア柔道選手権大会 2015(男子100kg級)
全日本選抜柔道体重別選手権大会 2015(男子100kg級)
ウルフは若手ナンバーワン選手。2015年に入り、柔道グランプリ・ウランバートル、柔道グランプリ・タシケントと連勝。さらに11月の講道館杯でも優勝を果たしており、伸長著しい。東海大学の先輩でもある羽賀を猛追している存在と言える。
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2015(男子100kg級)
柔道グランプリ・タシケント 2015(男子100kg級)
柔道グランプリ・ウランバートル 2015(男子100kg級)
講道館杯では決勝でウルフに逆転負けを喫したが、下和田にも期待がかかる。192pという長身、長い手足を利しての大外刈りには定評があり、その威力と共に注目したい選手だ。
男子100kg超級
2015年アスタナ世界選手権 決勝
七戸龍 vs T.RINER
一時低迷していたが、強化が着実に実を結び、徐々にタレントが揃い始めている日本の100s超級。
国内最高峰の全日本柔道選手権大会(以下、全日本選手権)ではなかなか優勝できず、日本一の称号を得ることはできないものの、世界選手権では、チェリャビンスク、アスタナと2大会連続銀メダルの七戸龍(九州電力)。対外国人では、世界王者のリネール(フランス)以外に敵なしと言える。
世界柔道選手権大会 2015(男子100kg超級)
世界柔道選手権大会 2014(男子100kg超級)
今年2015年の全日本選手権で優勝し、日本一となった原沢久喜(日本中央競馬会)。残念ながら世界選手権代表の座は、対外国人の実績から七戸に奪われたものの全日本選手権以降に出場したユニバーシアード、柔道グランドスラム・チュメニ、さらに柔道グランドスラム・パリと連勝し、現在進行形で急成長を続けている選手。切れ味鋭い、豪快な内股が魅力だ。
柔道グランドスラム・パリ 2015(男子100kg超級)
柔道グランドスラム・チュメニ 2015(男子100kg超級)
2014年の全日本選手権チャンピオン、王子谷剛志(旭化成)も七戸、原沢と互角の実力と言って良い。二人に身長では劣るものの、相手の顔を突き上げるように入る大外刈りの破壊力は抜群。虎視眈々と代表の座を狙っている。
2010年東京世界選手権無差別級優勝の上川大樹(京葉ガス)は、内股、払い腰、支え釣り込み足など、技の威力では世界屈指だが、攻めの遅さが玉にきず。今大会では「強い上川」の登場となるか。
世界柔道選手権大会 2010(男子無差別級)
現在の日本のトップ選手、さらに海外の強豪が参戦する今大会で優勝すれば、翌2016年のリオデジャネイロ柔道競技(五輪)代表の座も一気に近付くことになる。日本人同士の戦いも重要かつ激しいものになりそうだ。

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