嘉納治五郎師範 没後80年式典・偲ぶ会
2018年4月28日(土)、東京ドームホテル(東京都文京区)に於いて、公益財団法人講道館主催の「嘉納治五郎師範 没後80年式典・偲ぶ会」が行なわれた。
講道館柔道の創始者であり、柔道・スポーツ・教育分野の発展や、日本のオリンピック初参加に尽力するなど、日本に於けるスポーツの道を開き「柔道の父」と呼ばれた嘉納治五郎師範。今年は没後80年に当たる。
小学生から社会人まで、男女や国籍を問わず多くの人に支持されている講道館柔道。創始者の意思を受け継いで、明治15年(1882年)の講道館創立以来135年を超える歴史の中で、多くの柔道家が育ち、世界で活躍しているのは嘉納治五郎師範の功績によるものだ。
式典では、嘉納治五郎師範 没後80年記念刀剣献納式が行なわれ、公益財団法人全日本柔道連盟オフィシャルパートナーの東建コーポレーション株式会社 代表取締役社長兼会長の左右田鑑穂から、嘉納治五郎の孫にあたる嘉納行光講道館名誉館長へ、今回の式典に合わせ特別に制作された日本刀(刀剣)3振り、及び演舞用3振りの計6振りが献納されている。
今回献納された日本刀(刀剣)は、@「刀 羽州長谷堂住上林恒平」(かたな うしゅうはせどうじゅうかんばやしつねひら)、A「脇指 羽州上林恒平」(わきざし うしゅうかんばやしつねひら)、B「短刀 羽州上林恒平」(たんとう うしゅうかんばやしつねひら)の3振り。いずれも無鑑査刀匠・上林恒平氏によって制作されたものだ。
無鑑査とは「現代刀職展」(旧新作名刀展)という刀鍛冶が競う展覧会に出品した作品の数々において、別格の腕前が認められた称号であり、刀鍛冶における最高クラスの資格。1958年(昭和33年)に初の取得者が出てから、2017年(平成29年)までの間に「無鑑査」資格を取得した刀匠は、わずか37人という狭き門となっている。
柔道の起源と言われている柔術。その柔術と剣術には密接な関係性があり、柔道と日本刀の関わりはとても深い。講道館には嘉納家に伝わる守り刀「備州長船盛重」が所蔵されており、今回献納された日本刀(刀剣)3振りも講道館で所蔵・展示が予定されている。
なお、献納された演舞用3振り(大刀、脇指、短刀)は明日4月29日(日・祝)日本武道館(東京都千代田区)にて行なわれる平成30年度全日本柔道選手権大会決勝前の「極の形」(きめのかた)にて披露される。
日本刀紹介
式典にて献納された無鑑査刀匠・上林恒平氏制作の日本刀(刀剣)3振りをご紹介します。
刀 羽州長谷堂住上林恒平−かたな うしゅうはせどうじゅうかんばやしつねひら−
長 さ | 70.9cm | 反 り | 1.6cm |
---|
本刀は、正宗十哲(まさむねじってつ)の一人、備前の名工「兼光(かねみつ)」を手本として作刀されています。刀の姿は大切先(おおきっさき)で地鉄(じがね)は板目肌(いためはだ)が細かく、刃文(はもん)はゆったりとした湾れ刃(のたれば)を焼いています。湾れ刃の高くなったところに小足(こあし)の入るのが特徴です。
脇指 羽州上林恒平−わきざし うしゅうかんばやしつねひら−
長 さ | 55.6cm | 反 り | 1.2cm |
---|
脇指は中切先(ちゅうきっさき)の姿で地鉄は板目肌細かく、刃文は互の目(ぐのめ)に丁子足(ちょうじあし)が入り、備前長船(びぜんおさふね)の刀によく見られるものです。
短刀 羽州上林恒平−たんとう うしゅうかんばやしつねひら−
長 さ | 25.8cm | 反 り | 0.0cm |
---|
短刀は反りのない定寸のもので、地鉄は板目肌細かく、刃文は直刃(すぐは)に小互の目(こぐのめ)、少し逆足(さかあし)が入っています。
上林恒平氏の経歴
本作の作者である上林恒平氏は、人間国宝として活躍された故宮入行平(みやいりゆきひら)刀匠に入門後、昭和48年に文化庁より作刀承認を受け、高松宮賞受賞2回を含む特賞を7回受賞しました。昭和60年には38歳の若さで現在の刀工としては最高クラスとされる「無鑑査(むかんさ)」に認定され、活躍の場を広げています。
上林恒平氏の主な受賞暦 | |
---|---|
1967年 | 人間国宝 宮入行平刀匠に師事 |
1973年 | 日本美術刀剣保存協会新作名刀展 努力賞 以後、高松宮賞2回、特賞7回受賞 |
1985年 | 新作名刀展 無鑑査認定 |
2008年 | 山形県指定無形文化財(工芸技術)指定 |
式典の模様
会場風景@
19枚中 05枚目会場風景A
19枚中 06枚目会場風景B
19枚中 07枚目会場風景C
19枚中 08枚目会場風景D
19枚中 09枚目講道館 館長 上村春樹氏
19枚中 10枚目講道館評議委員・東京都柔道連盟会長 関根忍氏
19枚中 11枚目東建コーポレーション株式会社 左右田鑑穂 代表取締役社長兼会長
19枚中 12枚目嘉納治五郎師範没後八十周年記念刀剣 献納式
19枚中 13枚目鏡割り
19枚中 14枚目講道館理事 松下三郎氏
19枚中 15枚目講道館 館長 上村春樹氏と川口孝夫氏
19枚中 16枚目全日本柔道連盟 山下泰裕会長と上林恒平氏
19枚中 17枚目嘉納治五郎師範没後八十周年記念贈呈刀(刀、脇指、短刀)
19枚中 18枚目全日本柔道選手権大会 演武用贈呈刀(大刀、脇指、短刀)
19枚中 19枚目
嘉納治五郎師範没後八十周年 献納刀 献納 東建 左右田鑑穂
嘉納治五郎師範 没後80年式典・偲ぶ会で献納された日本刀(刀剣)3振り(刀、脇指、短刀)の紹介や、平成30年度全日本柔道選手権大会で披露された演武用贈呈刀3振り(大刀、脇指、短刀)を使用した「極の形」(きめのかた)の様子を動画にてご覧頂けます。


[再生時間]4:10
19枚中 04枚目