大会直前特集
今夏に行なわれる東京世界柔道選手権大会の女子重量級日本代表選手を決める上で重要な「皇后盃全日本女子柔道選手権大会」。今大会の展望についてご紹介します。
※掲載内容は2019年4月12日時点のものです。
平成最後の女子柔道日本一を決める第34回皇后盃全日本女子柔道選手権大会(以下、皇后杯)が4月21日(日)に開催される。今大会は、2019年8月に開催される東京世界柔道選手権大会(以下、世界選手権)の78kg超級の代表選考もかねており、2020年の東京五輪(柔道)の代表を占う上でも非常に重要な大会と言える。
優勝候補は、2018年のバクー世界選手権で優勝を果たした朝比奈沙羅(推薦・パーク24)と、2018年の皇后杯覇者である素根輝(推薦・環太平洋大学1年)。優勝争いはこの二人の間で行なわれるのが濃厚と思われるが、まずは、トーナメントを4つのブロックに分け、各ブロックの勝ち上がりを予想したい。
世界柔道選手権大会 2018(女子78kg超級)
Aブロック

2019年選抜体重別
女子78kg超級 決勝
素根輝 vs 朝比奈沙羅
第一シードに配された2018年大会優勝の素根がこのブロックでは断トツの実力。素根は、4月6日に行なわれた全日本選抜柔道体重別選手権大会(以下、選抜体重別)でも、決勝で朝比奈を破って優勝しており、好調の様子。この4月から環太平洋大学に進学し、新天地での活躍が注目されるところだ。
全日本選抜柔道体重別選手権大会 2019
(女子78kg超級)
このブロックで素根に対抗する選手は、山部佳苗(ミキハウス)。リオデジャネイロ五輪(柔道)銅メダリストで、皇后盃でも2012年、2014年、2016年と3度頂点に輝いている。全盛期に比べて地力は落ちているものの、足技や払腰など一発の威力には変わらぬ定評があるだけに要注目の選手と言える。
その他では、2018年の講道館杯全日本柔道体重別選手権大会(以下、講道館杯)78kg超級3位の粂田晴乃(筑波大学3年)、63kg級ながら、皇后盃の東京地区予選3位に入った佐々木ちえ(東京学芸大学3年)の勝ち上がりも注目される。
講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 2018(女子78kg超級)
Bブロック

2018年皇后盃 2回戦
井上舞子 vs 田嶋由佳
このブロックの有力選手は2018年3位の井上舞子(警視庁警察学校)と東京大会連覇の稲森奈見(三井住友海上)。
2018年は田知本愛(綜合警備保障:ALSOK)の負傷棄権によって勝ち上がる幸運にも恵まれたが、3位入賞を果たした井上にとって、今大会は真価を問われる大会でもある。
一方の稲森は、東京予選では6試合中5試合で一本勝ちと実力的にはこのブロックの中で一段抜けた存在。順当であれば、このブロックを勝ち上がるのは稲森と見て良いだろう。
Cブロック

2018年皇后盃 4回戦
冨田若春 vs 高山莉加
このブロックには、2018年準優勝の冨田若春(コマツ)を始め、2018年の世界ジュニア柔道選手権大会チャンピオンの児玉ひかる(東海大学1年)、2018年の全国高等学校総合体育大会(インターハイ)柔道競技王者、橋瑠璃(山梨学院大学1年)など、若手の有力選手が顔を揃えており、非常に興味深い対戦が続くことになる。
世界ジュニア柔道選手権大会 2018
(女子78kg超級)
全国高等学校総合体育大会(インターハイ)
柔道競技 2018(女子78kg超級)
その中でも、とりわけ注目したいのは児玉と中村美里(三井住友海上)の2回戦。中村は言わずと知れた52kg級で3度世界の頂点に輝いた選手だが、男子ならまだしも、女子において、体重差は絶対的な差と言われており、52kg級の小さな体で体重無差別の試合に参加すること自体、無謀な挑戦。それが初戦でいきなり体重差50kg以上の選手との対戦ということで、いったいどんな試合になるのか、非常に興味深い。
また、2019年の全国高等学校柔道選手権大会無差別を制した朝飛真実(桐蔭学園高校2年)の活躍にも注目したい。
Dブロック

2019年選抜体重別
女子78kg超級 準決勝
朝比奈沙羅 vs 秋場麻優
朝比奈沙羅(パーク24)が最有力のこのブロックだが、朝比奈にとっては、初戦から厳しい戦いが予想される。その初戦の相手は山本沙羅(福井県スポーツ協会)。2018年は3回戦で、2017年は4回戦で対戦。勝ちはしたものの毎回延長にもつれる激戦となっている。今回は1回戦での対戦。朝比奈にすれば、体力温存のためにも早期決着したいところだが、果たして思い通りの試合ができるだろうか。
朝比奈は勝ち上がると、4回戦で2018年の講道館杯優勝の秋場麻優(環太平洋大学4年)との対戦か、2017年の大会で3位入賞を果たしている高山莉加(三井住友海上)との対戦が予想される。78kg級ながら、調子が乗ってくると抜群のパフォーマンスを見せる高山にしても、重量級では小柄ながら動きが良く、受けの強い秋場にしても、油断すると足元をすくわれる可能性も十分にあり得る。
各ブロックの有力選手を見てきたが、ベスト4進出はほぼ間違いないだろうと思われるのが、Aブロックの素根とDブロックの朝比奈の現在の日本2強。そして、それを追うのが、Bブロックの稲森、Cブロックの冨田、児玉と見て良いだろう。稲森はやや力が落ちてきている感じではあるが、Bブロックに稲森の上位進出を脅かす存在が見当たらないのが現状だ。番狂わせがあるとしたら、このBブロックだが、稲森が順当に勝ち上がれるのかにも期待したい。
決勝は、先の選抜体重別決勝でも対戦した素根と朝比奈が濃厚。2018年の選抜体重別、皇后盃と、素根が朝比奈に連勝しているものの、対外国人の実績からバクー世界選手権代表には朝比奈が選出され、その世界選手権で朝比奈が優勝し、一歩リードする状況となった。しかし、2018年12月の柔道グランドスラム大阪準決勝、さらに4月の選抜体重別決勝と立て続けに素根が朝比奈を破っており、直接対決では、素根が圧倒している状況にある。対外国人選手でも差は縮まってきており、今回の対戦結果は、2019年の東京世界選手権の代表争いのみならず、2020年の東京五輪(柔道)代表レースにおいても、大きな意味を持ちそうだ。
柔道グランドスラム大阪 2018(女子78kg超級)
素根が一気に突き放すか、それとも朝比奈が踏ん張るのか。手に汗握る決戦になることは間違いない。