阿部 詩
東京五輪(柔道)
金メダリスト特集・
インタビュー

阿部 詩|東京五輪(柔道)金メダリスト特集・インタビュー

阿部 詩|東京五輪(柔道)金メダリスト特集・インタビュー

阿部 詩|東京五輪(柔道)金メダリスト特集・インタビュー

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2021年(令和3年)7月24~31日に開催された東京五輪(柔道)。男子・女子選手ともに大活躍し、階級別・混合団体合わせて12のメダルを獲得しました。なかでも金メダルは9つで、過去最多となっています。こちらでは、東京五輪2020における柔道金メダリスト「阿部詩」選手について大特集。試合内容やインタビュー記事がご覧頂けます。「金メダリストの東京五輪(柔道)の試合や、思い・今後の展望を知りたい」という方におすすめです。

女子52㎏級 阿部 詩

阿部詩

日本中が阿部一二三・詩兄妹の同日金メダルに期待し注目する中、先に登場した妹・詩は、2回戦、準々決勝、準決勝と、まるで兄・一二三を導くように勝ち進み、兄も、妹の順調な勝ち上がりを確認しながら着実に金メダルに向かって歩みを進めた。

阿部詩(以下、阿部)の勝ち上がりを追ってみたい。今大会、第2シードの阿部は2回戦から登場。ブラジルのピメンタには、釣込腰から押し込んで「技あり」を奪うとしつこく寝技で攻めて崩袈裟固に抑え、合技で一本勝ち、3分3秒。身体も良く動いており、順調な滑り出しと言える内容だった。

続く準々決勝の相手はジャイルス(イギリス)。ワールドランキング10位ながら、2月の柔道グランドスラム・テルアビブではリオデジャネイロ柔道競技(五輪)金メダリストのケルメンディ(コソボ)を内股で破って優勝するなど、上り調子の要警戒選手。ジャイルスと阿部は2019年東京世界柔道選手権大会の準々決勝で対戦しており、そのときは、阿部が大内刈「技あり」で勝っている。阿部は序盤から全開。袖釣込腰、大内刈など、あと一歩で「技あり」という技を連発すると、ジャイルスが不用意に仕掛けてきた内股を隅落で回して「技あり」を奪い(3分41秒)、優勢勝ちで決勝ラウンド進出を果たした。

休憩後の準決勝。第3シードのジェッフリダ(イタリア)が順当に勝ち上がってきた。2016年リオデジャネイロ柔道競技(五輪)銀メダリストで足技と担ぎ技を得意とする選手。阿部は、低く構えて先に足技や背負投を掛けてくるジェッフリダを、なかなか捕えることができずに苦戦を強いられるも、ゴールデンスコア(延長戦)に入り徐々にペースを掴むと、組み際、一瞬早く左手でジェッフリダの右袖を、そして右手で左袖を掴んで右内股に入り「技あり」奪取(延長戦3分11秒)。阿部が少ないチャンスを確実にものにし、決勝進出を決めた。

一方、反対側のブロックからは、前評判通りの強さで勝ち上がった第1シードのブシャール(フランス)が決勝に進み、優勝候補2人による頂上決戦の実現となった。

阿部とブシャールは過去に6度対戦しており、対戦成績は阿部の5勝1敗。数字的には阿部に分があるものの、最近の試合はいずれも接戦。数字ほどの力の差がないことは、阿部が最も良く分かっている。おそらく、阿部にとっては、2020年2月の柔道グランドスラム・デュッセルドルフ準々決勝で反則勝ちしたことよりも、2019年11月の柔道グランドスラム大阪決勝で敗れたことのほうがはるかに心に残っているのだろう。ブシャールに対する警戒心と大舞台の緊張感と高揚感からか、決勝に向かう表情は、いつも以上に引き締まって見えた。

阿部詩

決勝戦。阿部、ブシャールともに右組み。序盤は組み力の強いブシャールが奥襟を掴んで引き付け、阿部がやや組み負けて劣勢な印象。中盤、ブシャールが大内刈を掛け、防御姿勢になった阿部に腕挫十字固を仕掛けるが、これは素早く反応して防御。本戦4分は阿部の「指導」1ビハインドで終了。延長戦に突入した。

延長戦に入ると、ギアチェンジしたかのように阿部の攻めが加速。袖釣込腰で執拗に押し込み、決まらないとみるや寝技で攻め続ける波状攻撃。これはなんとか逃げ切ったブシャールだが、その表情には疲労がありありと表れていた。

再開後、ブシャールが小内刈からの流れで肩車を掛けると、阿部はその瞬間を待っていたかのように「腹包み」で捉え、そのまま崩袈裟固に。おそらく、この舞台でブシャールと戦うことをイメージし、何度も何度も繰り返し練習してきたと思われる一連の流れでガッチリと抑え込むと、ブシャールはまったく動けず。10秒「技あり」で勝負は付いたが、阿部はそのまま20秒抑え続けて「一本」。阿部の金メダルが決まった。ブザーが鳴った瞬間、何度も畳を叩いて大号泣。会場の大拍手の中、力強いガッツポーズで喜びを爆発させた。

52㎏級では日本初の金メダル。そして、このあとには兄の一二三が金メダルを獲り、五輪初の兄妹同日金メダルを実現させるわけだが、試合を控えていた兄にとっても、詩の金メダルは大きな力になったに違いない。

試合後にマイクを向けられると「4年間、この大会だけを目指して日々努力してきたので、努力が報われてよかった。(決勝のブシャールは)ライバルであり尊敬する選手。最後の相手にふさわしい選手だと思いましたし、勝てて良かったです」と話し「これからもっと努力して、素晴らしい金メダリストになれるよう頑張ります。これからも応援よろしくお願いします」と人懐っこい笑顔を綻ばせた。

独占インタビュー
金メダリスト阿部詩に聞く

東京五輪(柔道)の金メダリストたちに柔道チャンネルが独占インタビュー!金メダルへの道のりや試合内容、現在の思いなどを語って頂きました。

未踏の女子52kg級を初制覇!日本柔道史に残る兄妹同日優勝を達成

東京五輪での優勝おめでとうございます。女子52㎏級では日本勢初の金メダル獲得という快挙を成し遂げた気持ちを聞かせて下さい。

大会前から、自分が優勝すれば女子52kg級では日本勢初ということは分かっていたので、「絶対に金メダルを獲ってやるぞ」という気持ちでした。ただ、決勝戦で勝った瞬間は優勝できた喜びの方が大きく、日本で初めてという点は忘れていて・・・。しばらく時間が経ってから実感が湧いてきました。目標を達成できて良かったです。

2020年の開催が1年延期となりましたが、どのような気持ちで東京五輪本番を迎えましたか。

個人的には開催延期が決まっても、まったくネガティブな気持ちにはならなくて、むしろ「1年あればもっと強くなれる」と考えました。結果論にはなるのですが、1年延期になったからこそ獲得できた金メダルだったのではないかと思います。

1年8ヵ月前の敗戦が、五輪の決勝で活きた

1回戦はピメンタ選手(ブラジル)と対戦し、釣腰と崩袈裟固の合技一本で勝利しました。五輪初戦の緊張感は感じましたか。

やはり初戦はすごく緊張しました。ただ、どの大会でも1回戦が大切だと心に刻みながら戦っているので、今回も丁寧に戦おうと思って試合に臨みました。

準々決勝は試合終盤に技ありを奪って勝利。準決勝ではリオデジャネイロ五輪銀メダリストのジュフリーダ選手(イタリア)と対戦しました。試合前はどのようなことを考えていましたか。

今回戦った相手の中では唯一、過去に対戦したことがなかったので試合前はすごく緊張しました。担ぎ技が上手くて勝負勘もあり本当に強い選手だと感じていましたし、簡単には投げられないと思っていたので、粘り強くちょっとした隙を狙いながら戦った結果、延長戦の内股で技ありを奪うことができたのかなと思います。

決勝戦の相手はブシャール選手(フランス)でした。試合開始から積極的に技を仕掛け合う展開となりましたが、GS延長戦の抑え込みで1本勝ち。試合を振り返って頂けますか。

本当に強い相手なので「やはり決勝まで上がってきたか」という感じで試合を迎えました。また、絶対に本戦4分間では決着が付かないと考えていましたが、GS延長戦になれば絶対に自分が勝てるとも思っていました。実際に延長戦に入ったときも気持ちが揺るぐことはなく、勝負し続けることができた結果、抑え込みという形で勝てたのではないかなと思います。ブシャール選手とは2019年のグランドスラム大阪決勝で対戦し、肩車で投げられすごく悔しい思いをしたのですが、振り返るとそのときの負けが東京五輪決勝の舞台で活かせたのではないかと思っています。

パリ五輪で「2連覇」に挑む

優勝が決まった瞬間のガッツポーズが印象的でした。あのときの心境を聞かせて下さい。

まさか自分が五輪で優勝するなんて、という気持ちでした。もちろん、大会前から「金メダルを獲る」と公言して、自分を信じて戦っていたのですが、本当に優勝する瞬間が来ることは想像できていなかったのかもしれません。自分の感情を抑えられないという経験はあまりなかったのですが、優勝の瞬間はすごく嬉しくて、珍しく感情が爆発してしまって、あのようなガッツポーズにつながったのかなと思っています。

増地克之監督からは、どのような言葉をかけられましたか。

試合後はメディア対応など慌ただしかったのですが、畳を降りて握手をしたときに「大したものだ」と仰って頂きました。

直後に兄の一二三選手も男子66kg級で優勝し、日本柔道史上初の「兄妹同日金メダル」となりました。

幼い頃から、ずっと二人で「オリンピックで優勝する」と言い続けてきたので、その言葉を実現することができて「本当に夢は叶うんだな」と思いました。

最後に、阿部選手を支え、応援してくれた人たちへのメッセージをお願いします。

たくさんの方が自分の周りで支えて下さったからこそ、東京五輪で優勝することができました。金メダルを獲得することで、少し恩返しができたのかなと思っていますが、まだまだ自分の戦いは続きます。これからもサポートして頂いている皆さんへの恩返しができるよう、3年後のパリ五輪で2連覇することを目標に、自分らしく戦っていきたいと思います。

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柔道チャンネル「東京五輪(柔道)」について
東建コーポレーションが運営する柔道情報の専門サイト「柔道チャンネル」では、全日本柔道連盟オフィシャルパートナーとして、柔道にかかわる様々な情報を発信しています。2021年(令和3年)7月に開始した東京五輪2020は、連日のメダルラッシュで日本中を感動させました。柔道では計12個のメダルを獲得。なかでも金メダルは過去最多の9つとなっています。こちらでは、東京五輪2020における柔道金メダリスト「阿部詩」選手の試合をご紹介。熱い試合展開をご確認頂けます。
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