金野潤 強化委員長
東京五輪(柔道)
インタビュー

金野潤 強化委員長|東京五輪(柔道)インタビュー

金野潤 強化委員長|東京五輪(柔道)インタビュー

金野潤 強化委員長|東京五輪(柔道)インタビュー

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2020年(令和3年)に開催された東京五輪の柔道において、日本は階級別と混合団体で合わせて12個のメダルを獲得。その内金メダルは9個にも上ります。日本代表選手の活躍に、多くの人が感動しました。
柔道チャンネルでは、全日本柔道連盟の強化委員長「金野潤」(こんのじゅん)氏をインタビュー。金野潤氏は1994年(平成6年)、全日本選手権大会で吉田秀彦氏と戦って悲願の優勝を果たすなど、数々の大会で優勝・好成績を残しました。母校である日大柔道部のコーチ・監督としても活躍しています。インタビューの中では、東京五輪(柔道)の振り返りや金メダル獲得選手の試合内容などについて語って頂いています。

史上最多9個の金メダルを獲得! 沸き上がる「誇り」と「感謝」

東京五輪(柔道)を振り返り、現在の心境を聞かせて下さい。

コロナ禍という非常に厳しい状況の中で、男女14名の選手たち全員がすべての力を出し切ってくれたと考えています。結果にかかわらず、最後まで戦い切ってくれた選手たちを、心から誇りに思っています。そしてこの5年間、選手たちの力を最大限に発揮させるためにすべてを捧げ、尽くしてくれた井上、増地両監督、コーチ・スタッフの皆さんに、心からの敬意と感謝の気持ちを伝えたいと思います。

五輪という最高峰の舞台で、柔道日本代表は史上最多となる男女9階級で金メダルを獲得しました。

男女14階級と男女混合団体戦で金メダルを獲ることが我々の目標でした。目標を達成した選手たちは、最後まで諦めず、本当によく戦い抜いてくれたと思います。また、残念ながら目標に届かなかった選手もいますが、本来持っている力を出し切らせることができなかったことに対して、強化委員長として力不足を反省し、大きな責任を感じています。もちろん、9個の金メダルを獲得できたことは素晴らしい結果だと思いますが、それ以上に、苦しい状況の中で戦い切ってくれた選手たちのことを誇りに思っています。多くの方から「選手の戦う姿勢や試合後の態度が素晴らしかった」と言って頂き、素晴らしい大会にしてくれた選手たちには本当に感謝しています。

「戦う姿勢も、試合後の態度も素晴らしかった」

開催が1年延期され準備時間が長くなった一方、海外選手から研究される時間が増え、対応が難しくなる面もあったと思います。どのような心境で東京五輪(柔道)を迎えましたか。

開催延期が決定してからの約1年間は、練習環境が非常に限定的となり、海外渡航にも大きな制限がかかりました。海外で開催される大会に選手を派遣することに対して、否定的な意見を頂くこともありました。日本の選手たちが国際大会を経験できない一方で、ヨーロッパを中心に海外勢はしっかりと合宿をこなし、試合映像からも好調さが伝わってきていたので、確かに不安はありました。それでも男女両監督を中心に、いかに試合経験の不足を補っていくかを考え、可能な限りの対策を講じてきましたので、自信と不安、両方の思いが交差する中で大会を迎えました。

大会初日の高藤直寿選手(男子60kg級)に始まり、日本柔道は連日の金メダルラッシュとなりました。金メダルを獲得した選手たちへの想いと、今後期待することを聞かせて下さい。

誰一人として簡単に金メダルを獲った選手はいませんでした。一戦一戦、紙一重の勝負をものにして、最後まで頑張り抜いた素晴らしい戦いぶりに敬意を表したいと思います。選手たちが今後、どのようなプランで柔道と向き合っていくのか、まだ完全には把握し切れていません。ただ、これからは非常に大きな注目を集める立場になりますので、自分のための柔道に留まらず、いろいろな場で力を発揮してもらい、柔道界に貢献してほしいと思っています。

金メダルを獲得した選手たちには、どのような言葉をかけましたか。

バタバタとしていて、ゆっくり言葉をかける時間もありませんでしたし、やはり現場の中心は井上監督と増地監督ですから。一人ひとりに「おめでとう」と声をかけることはできましたが、それ以外の部分については監督やそれぞれの担当コーチがしっかりと話をしてくれていると思います。選手たちも有能ですし、監督、コーチ、スタッフも優秀ですから、強化委員長の立場として私にできる最大のマネジメントは「余計なことを言わない」ことだと思っていますので、その部分は徹底しました。

井上監督、増地監督への揺るぎない信頼

ロンドン柔道競技(五輪)後に井上康生監督が就任した男子は、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)で全階級メダル獲得、東京五輪(柔道)では史上最多の5階級で金メダルを獲得しました。8年間の井上体制をどのように評価していますか。

並々ならぬ覚悟で監督を引き受け、この8年間、男子日本柔道の立て直しに文字通り命を懸けて頂いたと思っています。その原動力となったのが、井上監督の選手たちに対する愛情であり、コーチ・スタッフへの気配りです。きめ細やかな指導は、非常に洗練されていました。そして、しっかりとしたビジョンや計画を持ち、それを実践する実行力に長けていて、類い希な知性を発揮してくれました。男子日本柔道の立て直しは決して簡単なことではなかったと思いますが、随所に素晴らしい才能を発揮し、惜しみない努力を重ねてきたことが、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)と東京五輪(柔道)の結果に表れたのだと考えています。監督としてすべてを出し切るというエネルギーが選手にも伝わり、「井上監督を男にしたい」という強い思いにつながっていたのではないかと感じます。

女子はリオデジャネイロ柔道競技(五輪)後に増地克之監督が就任しました。「準備力」をテーマに掲げ、寝技や体力面の強化に取り組んできたことが、東京五輪(柔道)で4階級の金メダルという結果につながったと思います。4年間の増地体制についてどのように考えていますか。

監督に就任して最初に取り組んだのは、現在の女子柔道に何が必要なのかを、科学的データに基づいて細かく分析することでした。そして、選手やコーチへのヒアリングも徹底して行いました。増地監督は現場の声に耳を傾ける「傾聴力」に優れた指導者だと思っています。いろいろな人の意見を聞き、科学的な知見から強化ポイントを絞って準備を進めるという作業を、的確に、ぶれることなく継続したことで、選手たちの安定感が格段に上がりました。これはデータにもしっかりと現れています。東京五輪(柔道)では4個の金メダルを獲得することができ、監督に就任して頂いて本当に良かったと思っています。

東京五輪(柔道)の結果を受け、日本に対する海外勢の警戒度はより一層高まると思います。今後、日本柔道にはどのようなことが必要だと思いますか。

大会を終えて、すでにかなりの時間を費やして東京五輪(柔道)の検証を進めていますが、監督やコーチ・スタッフの誰一人として、3年後のパリ五輪でも今回と同じような結果が残せるとは思っていません。東京五輪(柔道)はもう過去の大会であり、まったくのゼロからのスタートだと考えています。また、今回は地元開催という「地の利」があったことも、疑いようのない事実です。そうした部分を差し引いた上で、危機感を持って強化に取り組んでいかなければならないと考えています。東京五輪(柔道)で実践できなかった部分をいかに改善し、実践できた部分をいかに伸ばしていくのか、パリ五輪に向けて具体的な方針と対策を構築していきたいと思っています。

最後に、東京五輪(柔道)で日本柔道を応援してくれたファンの人たちにメッセージをお願いします。

東京五輪(柔道)は無観客での開催でしたが、会場となった日本武道館にいても、テレビやインターネットを通じても、たくさんの人に応援して頂いている、という雰囲気を強く感じました。背中を押して頂いた選手たちは、とても心強く、勇気付けられたと思っています。たくさんのご声援、本当にありがとうございました。これからも日本柔道はファンの皆様とともに、力を合わせて頑張っていきたいと思っています。引き続き、応援のほどよろしくお願いします。

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柔道チャンネル「東京五輪(柔道)」について
柔道に関する情報満載の「柔道チャンネル」。こちらでは、全日本柔道連盟の強化委員長である金野潤氏のインタビューがご覧頂けます。金野潤氏は全日本選手権大会やアジア柔道選手権大会、全日本柔道体重別選手権大会など、数々の大会で優勝・好成績を残した人物。日大柔道部のコーチ・監督としても活躍しています。インタビューでは、東京五輪(柔道)の振り返りや金メダルを獲得した試合内容などについて語って頂きました。柔道ファン必見の内容です。
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