東京五輪(柔道)
金メダリストのダイジェスト

東京五輪(柔道)金メダリストのダイジェスト

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東京五輪(柔道)金メダリストのダイジェスト

2021年(令和3年)7月24~31日に行われた東京五輪の柔道。男子・女子ともに連日熱い戦いが繰り広げられ、見ている人たちを感動の渦に巻き込みました。日本代表選手は女子48kg級の渡名喜風南選手、男子60kg級の高橋直寿選手の活躍を皮切りに、階級別・混合団体合わせて12個のメダルを獲得。特に金メダルは史上最多の9つで、海外メディアも日本の快挙を伝えました。
「東京五輪(柔道)金メダリストのダイジェスト」では、金メダルを獲得した選手の戦いをご紹介。「もう一度あの感動を味わいたい」「試合の様子を大まかに知りたい」という方におすすめです。

※文中のIJFポイントランキングは、2021年8月6日時点のものです。 ※掲載内容は、2021年8月6日時点のものです。 ※直近3年間の大会成績をリンクしています。

高藤 直寿(男子60kg級)

リオデジャネイロ柔道競技(五輪)銅メダリスト、世界柔道選手権大会(以下、世界選手権)では2017、2018年と2度のチャンピオンに輝いている高藤直寿(パーク24)。

今大会、第2シードの高藤は2回戦から登場。2回戦のフェルストラーテン(ベルギー)こそ内股で一本勝ちだったものの、準々決勝の、2019年東京世界選手権チャンピオン、チフビミアニ(ジョージア)との一戦も、準決勝の、2015年アスタナ世界選手権王者スメトフ(カザフスタン)との対戦も、いずれも延長戦となる大苦戦。危ない場面も幾度となくあったが、それでも、チフビミアニにはゴールデンスコア(延長戦)3分37秒「指導3」の反則勝ち、そしてスメトフには延長戦7分2秒の隅落「技あり」による優勢勝ち。まさに激闘を制しての決勝進出だった。

そして決勝。対戦相手はヤン・ユンウェイ(台湾)。得意の担ぎ技と崩上四方固を駆使して勝ち上がってきたダークホース。高藤は、ここ数年の間に急成長してきた新鋭の攻撃を、落ち着いた試合展開とベテランらしい巧みな組み手で封じ切り、「指導3」反則勝ちで快勝。試合後、若き挑戦者の手を上げ健闘を讃えると満面の笑顔を見せた。

試合後マイクを向けられた高藤は「古根川コーチ、井上監督にたくさん迷惑をかけてきたので結果を出せて良かった。金メダルは家族はじめ周囲のみなさんのおかげ」と感謝の気持ちを口にした。

阿部 一二三(男子66kg級)

達成すれば、史上初の「兄妹同日優勝」ということで注目された柔道2日目。女子52㎏級の阿部詩と男子66㎏級の阿部一二三(パーク24)。

男子66㎏級の阿部は、2017、2018年世界選手権チャンピオンで今大会第4シード。阿部は2回戦から登場すると、フランスのルブルーシュを切れ味鋭い大外刈で破ると、続く準々決勝のヨンドンペレンレイ(モンゴル)にも大外刈「技あり」で優勢勝ちして決勝ラウンドへ進出。

準決勝では、阿部にとって最大の強敵と思われた第1シードのランバルド(イタリア)を破って勝ち上がってきた好調カルグニン(ブラジル)を背負投で一蹴。引き手が取れた一瞬のチャンスを逃さなかったこともさることながら、主審の「一本」のコールのあとも、抑え込みを狙って攻め続ける姿勢に、阿部の成長が感じられた。

そして迎えた決勝。ジョージアのマルグベラシビリ。密着戦に強いパワフルな選手で、一瞬も気の抜けない試合となったが、不利な組み手がはずれ、一瞬できたチャンスを逃さずに大外刈「技あり」で優勢勝ち。直前に金メダルを決めた妹・詩に続き金メダルを獲得。史上初の兄妹同日金メダルを成し遂げた。

大野 将平(男子73kg級)

リオデジャネイロ柔道競技(五輪)に続く連覇を狙った日本のエース大野将平(旭化成)。今大会ノーシードで、プールAに入った大野は2回戦のライク(ルーマニア)に内股で一本勝ちして幸先の良いスタートを切ると、続く3回戦では、第8シードのシログル(トルコ)に横四方固で一本勝ち。そして、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)の決勝と同カードとなった準々決勝では、第1シードのオルジョフ(アゼルバイジャン)から内股と小内刈で2つの「技あり」を奪い合わせ技で完勝。順当に決勝ラウンドへ駒を進めた。

準決勝のツェンドオチル(モンゴル)は、初対戦ということもあり慎重な試合となったが、延長戦45秒、大野が右脇から深いところを掴むと、右に回りながら小外刈に入って「技あり」を奪い決勝進出。

決勝の相手は、今大会第2シード、2012年ロンドン柔道競技(五輪)66㎏級の金メダリスト、ジョージアのシャブダトゥアシビリ。序盤から力のこもった技の応酬となるも、やや慎重な大野が「指導」を先行される展開。延長戦に入ってからも一進一退の攻防が続き、「指導」は大野が1枚ビハインド(1-2)の状態で推移するも両者の疲労が色濃くなってきた5分26秒、大野の膝車に、シャブダトゥアシビリが弧を描いて崩れ「技あり」。この瞬間、大野の五輪連覇が決まった。

永瀬 貴規(男子81kg級)

初日から3日連続で金メダルと絶好調の日本ながら、ここからが厳しい戦いのスタート。81㎏級は、2000年のシドニー五輪以来金メダルのない階級。リオデジャネイロ柔道競技(五輪)銅メダリストで、2017年に右ヒザをケガして手術、そこから復帰してきた永瀬貴規(旭化成)にとって、かなり厳しい戦いが予想された。

ノーシードの永瀬は、初戦(2回戦)でいきなり第4シード、世界ランキング4位で2018年世界選手権3位のアルバイラク(トルコ)と対戦。延長戦3分16秒という、厳しい戦いを強いられるも粘り強い柔道で相手の「指導3」を誘い反則勝ち。その後は、3回戦のパルラッティ(イタリア)を足車、そして準々決勝のレッセル(ドイツ)を延長戦の末の谷落「技あり」と着実にポイントを奪っての勝利で決勝ラウンド進出を遂げた。

準決勝の相手は第1シード、今年6月のブダペスト世界選手権優勝のカッセ(ベルギー)。今大会で最強の敵と見られた選手との対戦は、延長戦2分48秒、背負投「技あり」で勝利。決勝進出を果たした。

決勝の相手は、2018年世界選手権王者のモラエイ(モンゴル)。イラン出身で、難民選手団所属を経て現在モンゴル籍の選手。この試合も激戦となったが、延長戦に入りややスタミナの切れたモラエイを、永瀬が足車からの体落で投げて「技あり」。リオデジャネイロ柔道競技(五輪)の悔しさ、そしてケガを乗り越え、永瀬が見事優勝を飾った。

ウルフ アロン(男子100kg級)

2017年世界選手権王者ながら、2018年に右ヒザ半月板を損傷。万全の状態ではないものの、1年の延期により、かなり状況は改善。「ヒザの使い方、痛みとの付き合い方も分かるようになり、不安はない」と大会前に話していた通り、落ち着いた表情で初戦を迎えたウルフアロン(了德寺大学職員)。

ウルフの初戦(2回戦)はウズベキスタンのフルラモフ。ウルフはこの試合、1分23秒見事な浮落で快勝して波に乗ると、続く準々決勝のパルチク(イスラエル)には、得意の大内刈で「技あり」を奪って優勢勝ち。良い内容で決勝ラウンド進出を決めた。

準決勝は、第1シードで、最難関のリパルテリアニ(ジョージア)。前回のリオデジャネイロ柔道競技(五輪)は90㎏級で銀メダル、2017、2018年世界選手権100kg級銀メダルと、優勝こそないものの決勝の常連の実力者だ。

ウルフとリパルテリアニの対戦は、胸を合わせての接近戦からリパルテリアニが小外掛を仕掛けようとしたところ、ウルフが大内刈にとらえて「技あり」。その後は、リパルテリアニの猛攻を凌ぎ切り優勢勝ち。決勝で難敵、チョ・グハン(韓国)と対戦することとなった。

2018年世界選手権王者チョとの対戦は、予想通りの消耗戦となるも、延長戦5分35秒、ウルフが執念の大内刈でチョをとらえ「一本」。ウルフがケガを乗り越え、2000年井上康生監督以来の100㎏級金メダリストとなった。

阿部 詩(女子52kg級)

女子52㎏級の阿部詩(日本体育大学)と男子66㎏級の阿部一二三。同じ日に試合をするというのもできすぎた話だが、そんなところにもスター性を感じさせる「阿部兄妹」。日本中が注目する中、柔道2日目はスタートした。

女子52㎏級の妹・詩(以下、阿部と表記)は、現在、21歳ながらすでに世界選手権2連覇(2018、2019年)で、実力は自他ともに認める世界一。

今大会第2シードの阿部は2回戦から登場。ブラジルのピメンタを釣込腰「技あり」から崩袈裟固に抑え、2分3秒合技で破ると、準々決勝のジャイルス(イギリス)には隅返「技あり」で勝利。難なく決勝ラウンドへ駒を進めた。

準決勝は、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)銀メダリストのジェッフリダ(イタリア)にやや苦戦するも、延長戦3分11秒、組み際の内股「技あり」で優勢勝ちし決勝進出を決めた。

決勝の相手は、2019年の柔道グランドスラム大阪で敗れ、阿部の最大のライバルと目された今大会第1シードのブシャール(フランス)。予想通り、この試合も非常に厳しい戦いとなったが、延長戦4分27秒、ブシャールが肩車にきたところを潰すと、そのまま崩袈裟固でがっちりホールド。10秒「技あり」で金メダルが確定するも、阿部は20秒抑え切り「一本」! 顔をくしゃくしゃにし涙を流しながら何度も畳を叩き、喜びを爆発させた。

新井 千鶴(女子70kg級)

2017、2018年世界選手権チャンピオンの新井千鶴(三井住友海上)。2019年の東京世界選手権では3回戦で敗退し苦汁をなめた。あれから2年、場所は同じ日本武道館ということで、新井にとって、雪辱を晴らす絶好の機会だ。

この階級は上位陣の力が拮抗しており、8人のシード+αの選手に優勝の可能性があり、新井とその他2名ほどがその中でも抜け出た存在と見られており、実際、大方その予想通りの勝ち上がりとなった。

シード8人のうち、第2シードのピノ(フランス)が2回戦で、そしてポルテラ(ブラジル)とベルンホルム(スウェーデン)が3回戦で敗退。

そんな中第3シードの新井は順当な勝ち上がりを見せた。初戦(2回戦)で、2017年世界選手権決勝で対戦したペレス(プエルトリコ)を大外刈で破ると、準々決勝ではスコッチマッロ(ドイツ)に体落「技あり」からの縦四方固「技あり」の合技で一本勝ち。順調に決勝ラウンドへ進んだ。

準決勝は、5月の柔道グランドスラム・カザンで敗れているタイマゾワ(ロシア)に苦戦するも16分41秒に及ぶ死闘の末、送襟絞で一本勝ち。決勝で第7シードのポレレス(オーストリア)と対戦することとなった。

決勝は、小外刈で「技あり」を先行した新井が、返し技中心のポレレスの技を凌ぎ切って優勢勝ち。見事、初出場初優勝を果たした。

濵田 尚里(女子78kg級)

第1シードのマロンガ(フランス)と第2シードの濵田尚里(自衛隊体育学校)。世界ランキングでも1位、2位の両者がこの階級の主役。2019年の東京世界選手権決勝ではマロンガが勝ち、その後の団体戦での対戦では濵田の勝利。今大会も両者が圧倒的な強さを見せて決勝まで勝ち進んだ。

まずマロンガの勝ち上がりを見ると、2回戦でグラフ(オーストリア)を内股(1分6秒)、準々決勝でアントマルチ(キューバ)を小内刈(延長戦1分30秒)、準決勝でユン・ヒョンジ(韓国)を反則(「指導3」2分23秒)。

濵田の勝ち上がりは、2回戦のパクト(ポーランド)を隅落と横四方固の合技(2分32秒)、準々決勝はバビンツェワ(ロシア)を送襟絞(2分38秒)、準決勝はワグナー(ドイツ)を腕挫十字固(1分23秒)。得意の寝技を駆使し、まったく危なげない試合内容だった。

予想通りの対戦となったマロンガと濱田の決勝戦。『立ってマロンガ、寝て濵田』そんな試合展開が予想されたが、30歳、遅咲きの濵田の金メダルへの渇望が、そのまま試合に反映したかのような展開となった。

開始早々、マロンガの渾身の大内刈を、ギリギリで外し、前に潰した濵田は、そのままマロンガを立たせず。帯取り返しで身体を返すと、その後止まることなく30秒にわたって寝技で攻め続け、ついに崩上四方固に抑え込んで「一本」(1分9秒)。寝技師・濵田が、完勝と言える内容で東京五輪(柔道)金メダルに輝いた。

素根 輝(女子78kg超級)

7月9日に21歳になったばかりの素根輝(パーク24)。78㎏超級の中では最も身長が低いものの、周囲に与える安心感や存在感は日本代表の中でも上位クラス。今大会も、初の五輪出場とは思えないほど、落ち着き、安定した試合を見せた。

今大会第3シードで臨んだ素根は、2回戦から登場。イスラエルのヘルシュコを体落で破ると、続く準々決勝でも2019年東京世界選手権3位のサイート(トルコ)を体落「技あり」で崩し、そのまま横四方固に抑え込み、合技で一本勝ち。まったく危なげない内容で決勝ラウンドへの進出を決めた。

準決勝。相手のキンゼルスカ(アゼルバイジャン)はひと回り大きな選手。過去の対戦成績は2勝2敗だったが、伸び盛りの素根は、体格差をものともせず、大内刈で大きな身体をなぎ倒して「技あり」を奪うと、そのまま崩袈裟固に抑えて合技「一本」。小よく大を制す、見事な柔道で決勝進出を果たした。

決勝戦の相手は予想通り、2012年ロンドン柔道競技(五輪)金、2016年リオデジャネイロ柔道競技(五輪)銀メダリストで、今大会も第1シードの女王・オルティス(キューバ)。世帯交代がささやかれる中、準決勝では21歳の新鋭・ディッコ(フランス)を横車「技あり」で破り、改めて存在感を見せての決勝進出だった。

決勝戦。2019年の東京世界選手権でオルティスを破っている素根は、この決勝でも臆することなく、体落、大内刈などで攻め続け、延長戦4分52秒、オルティスの「指導3」反則により勝利。うれしい金メダル獲得となった。

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柔道チャンネル「東京五輪(柔道)」について
東建コーポレーションが運営する柔道情報の専門サイト「柔道チャンネル」では、全日本柔道連盟オフィシャルパートナーとして、柔道にかかわる様々な情報を発信しています。2021年7月に開始した東京五輪(柔道)は日本人選手の勢いがめざましく、その活躍は見ている人たちを感動させました。こちらの「東京五輪(柔道)金メダリストのダイジェスト」では、東京五輪の柔道で金メダルを獲得した選手の試合についてご紹介。手に汗握る熱い戦いを、ダイジェスト形式で解説しています。
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