東京五輪(柔道)男子66kg級日本代表内定選手決定戦 大会の見どころ

東京五輪(柔道)男子66kg級日本代表内定選手決定戦について、見どころポイントをご紹介します。

決勝戦
丸山城志郎 vs 阿部一二三
丸山城志郎(ミキハウス)と阿部一二三(パーク24)が、東京五輪(柔道)男子66kg級代表の座をかけ、雌雄を決するときがついにやってくる。
新型コロナの感染拡大の影響を受け、本来、決定の場として設定されていた2020年4月の全日本選抜柔道体重別選手権大会(以下、選抜体重別)が延期、さらに12月の柔道グランドスラム東京2020の開催も見送られることになり、果たして、いつ、どのような方法で決着するのかと柔道ファンのみならず、日本中が注目する中、ついにその日が決定した。
12月13日。場所は講道館大道場。
この日、講道館では、両選手による1試合のみが行なわれ、観客こそいないものの、その映像は全国に生放送・生配信される。まさに、2人だけのために、最高の舞台が整えられた。
前代未聞。
現在の柔道の試合は、一部の団体戦を除けば、トーナメント戦で行なわれ、ボクシングや格闘技のように、いわゆる「ワンマッチ」の試合はまずない。しかも、今回は東京五輪(柔道)の代表選手を決める重要な試合である。まさに「前代未聞」の試合であり、丸山と阿部が、稀代の柔道家だからこそ実現することになったのだ。
果たして、どのような試合が繰り広げられるのだろうか――。これまでの対戦を振り返りながら展望してみたい。

全日本柔道体重別選手権大会
3回戦
丸山城志郎 vs 阿部一二三
両者の初対決は5年前、2015年11月の講道館杯全日本柔道体重別選手権大会(以下、講道館杯)に遡る。阿部は神港学園神港高校3年生、対する丸山は天理大学4年生。前年の講道館杯で優勝、柔道グランドスラム東京2014も優勝し、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)候補の超新星と注目されていた阿部だったが、準々決勝の丸山に巴投「有効」でまさかの敗退。この敗退により阿部は、柔道グランドスラム東京2015出場枠から漏れ、実質、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)代表の道を閉ざされることになった。
リオデジャネイロ柔道競技(五輪)代表は逃したものの、ここから阿部の快進撃が始まる。翌2016年4月の選抜体重別で、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)代表となった海老沼匡(パーク24)に準決勝で一本勝ち、そして決勝では丸山にゴールデンスコア(延長戦)の末、「指導2」優勢勝ちして初優勝。さらにグランドスラム3大会すべてを制し、2017年4月の選抜体重別も優勝してブダペスト世界柔道選手権大会(以下、世界選手権)代表に。そして、6試合中5試合で一本勝ちという圧倒的な内容で優勝、一気に世界の頂点に駆け上がった。
世界王者となった阿部は2017年11月の柔道グランドスラム東京でも丸山を延長戦の末、大内刈で破ると、翌2018年9月のバクー世界選手権で連覇を達成。階級最強の名を不動のものにしつつあった。
- 世界柔道選手権大会 2018(男子66kg級)
しかし、ここから丸山の反撃が始まる。4度目の対決となった2018年11月の柔道グランドスラム大阪決勝で巴投「技あり」で優勢勝ちすると、翌2019年4月の選抜体重別決勝でも、試合時間13分23秒という激闘を制し、浮技「技あり」による優勢勝ちで連勝。東京世界選手権には、両者が代表に選出されることとなった。
- 柔道グランドスラム大阪 2018(男子66kg級)
- 全日本選抜柔道体重別選手権大会 2019(男子66kg級)
- 世界柔道選手権大会 2019(男子66kg級)

準決勝
丸山城志郎 vs 阿部一二三
迎えた東京世界選手権。準決勝で対戦した両者は一歩も引かぬ激しい攻防を繰り広げた末、延長戦3分46秒、丸山が浮技「技あり」による優勢勝ちで勝利、続く決勝でキム・リマン(韓国)を破り、ついに丸山は世界チャンピオンの座に着いた。
これで、東京五輪(柔道)代表レースでも一歩前に出た印象の丸山。2019年11月の柔道グランドスラム大阪は、丸山が優勝すれば代表内定という状況で迎えた。順当に勝ち進み、決勝で相対した両者。この試合も一進一退の厳しい戦いとなったが、延長戦3分27秒、阿部が丸山の内股を返して「技あり」優勢勝ち。阿部の執念の勝利で、東京五輪(柔道)代表内定は、次戦に持ち越されることとなった。
- 柔道グランドスラム大阪 2019(男子66kg級)
以上、振り返ってきたように、両選手の直接対決7戦のうち、6戦が延長戦の末の決着で、いずれも痺れるような緊張感を帯びた試合だった。結果は丸山の4勝3敗――ほぼ互角と言って良いだろう。
下馬評は、技の切れ、柔道の巧さで丸山が上回るという声もあれば、ここ一番の勝負強さで阿部が優ると持論を語るファンもいて、完全に二分している。
丸山の内股、袖釣込腰、巴投、阿部の背負投、袖釣込腰、大腰、いずれも一発で勝負を決める破壊力を持つ。勝ちたいという思いも、両者同じくらいに強いものだろう。「心・技・体」どれをとっても両者に大きな差があるとは思えず、勝敗を予測するのは困難を極める。両者の熱き戦いの行方は、皆さんの目で確かめてほしい。