「上野順恵」著名な柔道選手インタビュー

  

上野順恵

 

ロンドンオリンピックにて銅メダルを獲得した上野順恵選手。
念願のオリンピック出場から、試合についてお話を伺いました。

念願だった夢の舞台

念願だった夢の舞台

私が本格的にオリンピックを目指そうと思い始めたのは、三井住友海上に入社してからです。

柳澤久監督や一緒に練習をする先輩方がオリンピックに対してとても高い意識を持って取り組まれていたため、その環境の中で刺激を受けながら「自分もオリンピックに出たい」という気持ちが自然に芽生えていきました。

ロンドンオリンピックが初出場でしたが、実際にはアテネオリンピックや北京オリンピックでも出場のチャンスはありました。

特に北京オリンピックの代表選考では、全日本選抜柔道体重別選手権大会で優勝しましたが代表に選ばれず、とても悔しい思いをしました。

ただ、自分としては反省点もたくさんありましたので、その後の4年間はより強い気持ちを持って練習や合宿をこなすことができました。

だからロンドンオリンピックの代表に選ばれたときは、嬉しさと同時に「やっと出られるんだ」という気持ちでしたね。

ロンドンオリンピックでの銅メダルという結果については、「心からは喜べない」というのが正直な気持ちです。

それでも、帰国すると皆さんから想像以上に祝福して頂き、本当に銅メダルが獲れて良かったと思いました。メダルを獲得できたのは周囲の支えがあったからこそ。

準々決勝で負けてしまったときはすごく落ち込んでいたのですが、そのときに周囲の人達に励まされ、「開き直っていこう」と気持ちを切り替えられたことが、メダルを獲得できた大きな要因だと思っています。

順調に進んだ調整

順調に進んだ調整

オリンピックに向けての調整は順調でした。

合宿の回数も多く、内容も相当に厳しいものでしたが、周囲のスタッフがしっかりと身体のケアをしてくれたお陰で、何とか乗り切ることができました。

周りの選手に比べて私は年齢を重ねているので、体力が回復しにくいという面はありましたが、怪我をすることもなく無事にオリンピック本番を迎えることができて感謝しています。

ロンドンオリンピックの柔道代表では、私が男女を通じて最年長の選手でしたので、皆をまとめなければという気持ちもあったのですが、全員がしっかりとしていたので特に何も言うことはなく、頑張っている姿を見せられればと考えていましたね。

オリンピックでは自分の持ち味である「粘り強い柔道」を実践できたと思います。でも、やはり結果として負けてしまったわけですから、何とも言えませんね…。

これがオリンピックなのか

これがオリンピックなのか

日本チームとしては開幕から2日間は思うような結果が残せていませんでしたし、試合当日の朝は本当に緊張しました。

特に1回戦は何が起こるか分からないので、畳に上がるまでは独特の緊張感がありましたね。

ただ、前日に57kg級で松本薫選手が金メダルを獲得したので、自分もその勢いに続こうという気持ちはありました。

他の階級の選手達からの「頑張って」という声援に勇気が湧き、「絶対にメダルを獲ってやる」という気持ちになれました。

1回戦は自分が得意とする展開に持ち込み、早い時間帯で勝つことができましたが、決して調子は良くありませんでした。

実際、2回戦ではなかなか技を掛けられず延長戦までもつれることに。ゴールデンスコア方式の延長戦では、本当にちょっとしたポイントで勝敗が決してしまうので緊張もありましたが、「ここからが勝負だ」と強い気持ちで臨み、何とか勝つことができました。

合宿で厳しい練習をこなしたことも心の支えになりましたね。

この2回戦は自分の得意とする「粘り強さ」を発揮できた試合でしたが、試合のあとはこれまでに経験したことのない疲労感があり、かなり消耗していました。

自分にとってのロンドンオリンピックは、やっと出られた大会。今振り返ると、「何としても勝ちたい」という気持ちが強過ぎて、自分の中の歯車が狂ってしまっていたのかもしれません。

その気持ちが、余計な緊張感を生んでしまったという部分もあると思いますし、「これがオリンピックなのか」と実感させられた試合でした。

気持ちの切り替え

気持ちの切り替え

準々決勝の対戦相手は、前年のアジア柔道選手権大会で個人戦・団体戦共に負けていたジョン・ダウン選手(韓国)。

もちろん、そのことは意識していましたが、同じ年の世界柔道選手権大会では私が寝技で勝っていたため、同じ展開に持ち込んで勝つんだという気持ちで試合に臨みました。

しかし、相手もかなり警戒していて、組み手も厳しく、技を掛けさせないよう工夫してきて、指導2回の優勢負けでした。

敗因は、やはり「思い切り」の部分だと思います。1・2回戦と比較して試合の入り方が慎重になり過ぎて、相手を見てしまい自分から前に出ることができませんでした。

試合中には意識していませんでしたが、心のどこかで「負けてはいけない」というプレッシャーを感じていたのかもしれません。負けた瞬間は「もう終わってしまった」という感じで、次の試合のことなど考えたくない状態でした。

敗者復活戦に向けて気持ちを切り替えられたのは、コーチや姉妹の励ましでした。特に姉(雅恵)の「ここでメダルを獲るか獲らないかで、これまでの努力の意味がまったく違うものになる」という言葉に勇気付けられました。

私はもともと泥臭い柔道が持ち味なのですが、「もっと泥臭くても良いから絶対に勝つんだ」と、徐々に気持ちを上げていくことができました。実際に敗者復活戦では終了直前に有効ポイントを取って優勢勝ち。

3位決定戦でもメダルを目指して向かってくる相手に対して気持ちで負けることなく、攻めの柔道をすることができたと思います。

姉妹の支えで掴んだメダル

姉妹の支えで掴んだメダル

女子63kg級は谷本歩実さんが、アテネオリンピックと北京オリンピックと2大会連続で金メダルを獲得した階級。

私が金メダルを獲れば3大会連続ということもあり、周りからの期待はすごく感じていました。

また、階級は違いますが、姉も女子70kg級で2大会連続の金メダルを獲っています。「私は私なのだから」という気持ちで、できるだけ考えないようにはしていましたが、自分では気付かない部分でプレッシャーを感じていたのかもしれません。

3位決定戦が終わったときの素直な気持ちは「やっと終わった」という感じ。金メダルを目指していたので、「やったぞ」という気持ちにはなれませんでしたね。試合後もメソメソしていたし、会場まで応援に来てくれていた両親が「金メダルが獲れなくて悔しいだろうな」と思いながらも、「本当によく頑張ったね。お疲れ様」と声を掛けてくれ、私を気遣ってくれていることが伝わってきました。

それでも、時間が経つにつれて「最高の舞台で試合をすることができて、自分は幸せだな」と思えるようになり、表彰式では晴れ晴れとした気持ちで自然に笑顔になることができました。

表彰台で日の丸が揚がっていく様子を見たときは「もう2つ高い位置にあったらな」と思いましたけど(笑)。

膝を痛めていたなかで、身体を張ってずっと私の練習相手になり、身体のケアをしてくれた姉や、精神面でサポートをしてくれた妹には本当に感謝しており、その思いを背負ってぜひ金メダルを獲りたかったのですが…。

実は表彰式のあとに、たまたま姉や妹と会うことができたんです。そのときに「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えることができました。

姉や妹だけでなく、ロンドンオリンピックでの銅メダルは、多くの人達のお陰で獲得できたもの。支えて下さった皆さんに感謝しています。

経験を伝えることが使命

経験を伝えることが使命

ロンドンオリンピックでは、たくさんの応援を頂きありがとうございました。

本当に情けない試合内容でしたが、準々決勝で負けてから立ち直り、銅メダルを獲れたことは自分にとって非常に大きな経験になりましたので、今後も前向きに、自信を持って生きていこうと思います。

柔道を始めてからロンドンオリンピックまで、振り返るとあっという間でしたが、私にとってオリンピックの舞台は、ロンドンオリンピックが最初で最後だと今は思っています。

周囲の方は「次は金メダルだ」と言って下さるのですが、今後のことに関してはまだ決まっていません。

帰国後に恩師の中野政美先生にお会いする機会があり、「十分に頑張ったのだから第一線から退いても良いんだよ」という言葉を掛けて頂きました。

その言葉にホッとしたというか、嬉しさを感じる自分もいましたので、ゆっくりと時間をかけて今後を考えたいと思います。

もちろん、自分の経験を次の世代に伝えていくのが使命だと考えていますので、これからもトレーニングや練習は続けていきます。

 

インタビュー:2012年11月

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