著名な柔道家インタビュー

篠原信一 天理大学准教授&全日本柔道男子ナショナルチーム監督インタビューその1

北京五輪(柔道)(2008年8月)後に全日本柔道男子ナショナルチーム監督に就任した篠原信一氏。先のロッテルダム世界選手権(2009年8月)では「金メダルゼロ」という結果でスタートすることとなってしまいました。

それでも、「今が一番のどん底なので、あとは這い上がるだけ」と、ロンドン五輪(柔道)(2012年)に向け決意を新たにする篠原氏に、全日本男子柔道の現状と今後、そして自身の選手時代についてもお話をお聞きしました。

篠原信一氏

3回目の挑戦でようやく世界チャンピオンに

篠原信一氏個人戦での一番の思い出言うたら、やっぱりバーミンガムの世界選手権ですかね。世界選手権3回目の挑戦、6年目でようやく優勝できましたから。
1995年の幕張で3位、1997年のパリが2位でしょう。1999年バーミンガムでやっと優勝してるんですよ。だから、選手のことをあんまり言えないんです。結局、最初から結果残してないやないかと。それを言われたら、それまでなんでね(笑)。
6年かけてようやく獲った。おまけに2つ(100kg超級と無差別の2階級)でしたから、あのときは本当に「良かったぁ」と安心しましたしね。
でも、パリ世界柔道選手権(1997年)の2位のときは、(決勝戦でフランスのドゥイエに不可解な判定により反則負け)「なんで俺が反則負けやねん」って、シドニー五輪(柔道)(2000年)で負けたときより悔しい思いは強かったですけどね。
(※シドニー五輪(柔道)決勝では、ドゥイエの内股をタイミング良く透かし「一本」でもおかしくない技だったが、逆にドゥイエの「有効」に。結局、そのままドゥイエの優勢勝ちとなり無念の銀メダルとなった。『世紀の大誤審』として多くのメディアにも取り上げられた。)

柔道は全日本選手権、世界選手権、五輪、やっぱりこの3つですから。そのうち、全日本優勝して、世界もなんとかクリアした。バーミンガムの次の年がシドニー五輪(柔道)でしたので、あとは五輪だと。これで金メダルを獲ったら、すぐに柔道を辞めようと思っていました。
なんでかと言ったら、基本的にはしんどいことをするの嫌いですから。どちらか言うたら、なまけもんですからね、自分の本質は。だからやっぱりそういうふうに、目標に向かってやるぞとなって一生懸命やって、でも簡単には獲れない。世界を獲るのにも6年もかかったと。
今だったらもう使ってもらえませんよ。「2回もチャンスやって負けたヤツなんか使えるか」って、自分が監督だったら言いますよ(笑)。でも、自分の場合は運良く出してもらって、結果を残すことができましたけどね。
だから、あとは五輪。もうこれを獲ったらすぐに辞めようって思いましたから。その代わり、それまではとにかく頑張ろうと思いましたけどね。


今の選手は「もったいない」

今までの話でも分かるように、自分はエリートでもなんでもないんですよ。
だから、他の選手を見ていると「もったいないな」と思うわけです。自分の場合はセンスもない、ただ人よりは体が大きかった、背が高かった。ガリガリではないですけど、ひょろっとしていて筋肉もありませんでしたし、どちらかと言うと、ダラッとした感じですよ。
そこから、筋肉が付いて130kgぐらいにはなりましたけどね。でも、今のトップの選手なんて、ほとんどが高校でチャンピオンになっていて、国際大会にも出してもらっている。しかも、そこでも優勝したりしていて、大学に入ってもそこそこ強くて国際大会にも出してもらっている。そういう経験をするチャンスがいっぱいあるわけじゃないですか。ましてですよ、スタートラインが違いますから、自分とは。
小学校からやってきて、それでずっとトップできているわけだから、もっと本気になって、もっと強い意識を持ってやれば、もっと強いはずだろう、もったいないなと思うんですよ。そこが、ハングリーさがないというか、環境に甘えているような感じがして仕方ないんですよ。

日本に必要な、精神面と体力面の強化

篠原信一氏最初にも言いましたけど、これからの日本に必要なのは、技術うんぬんよりも、精神的な強化と体力面の強化だと思うんです。
自分らのころやったら、外国人と試合したとき、とりあえず3分しのげば、バテて来るというのはありましたけど、今はどちらかと言うと、日本人のほうがバテてますからね。そういった意味でも、もう一度、体力面を強化する必要がある。

技術的にはそう変わらないと思うんですよ。どちらかと言ったら、日本人のほうが巧さはあるくらいだと思うんです。だから、組み手うんぬんより、まずは体力面の強化。
ひと昔前は足を取られて負けるケースも多かったんですけど、最近はしっかりと組んだうえで、がっつり見事に持っていかれてますからね。
試合時間5分間、ゴールデンスコア入れて8分間、8分×5試合、正味40分。まずは、それをしっかり攻め続けられる体力を付けさせることだと思っています。ハングリーさや精神的な強さもそうすることによって、おのずと付いてくるのかなと。


最終目標はロンドン五輪(柔道)

学生の大会(10月11日、12日の全日本学生体重別)を見ても、正直、あまりパッとしない。「これは厳しいなぁ」というのが率直な感想です。
これから高校生、大学生くらいの若い選手をしっかり強化していかないと、ロンドン五輪(柔道)もそうですけど、ロンドンの先も危ういなと。
今は最低ラインですから危ういどころじゃないんですけど、このままいくと、金メダルを獲れる見込みさえもなくなってしまう。そんな危機感を感じています。

今までも、たしかに金メダルゼロの可能性というのは、ずっと言われ続けてきましたけど、それでもなんとか最低でも1個は獲ってきたわけです。それで、「Xデーはいつだ」と、記者のなかでは言われていた思うんですね、自分も言ってましたから、監督になる前は。
で、監督になってからは、「今回、Xデーもありうるな」と思いながらも、あまり大きな声では言えませんけど、「でも、穴井(隆将)は絶対に獲るやろう」と思っていたんですね。
でも、結果としてロッテルダム世界柔道選手権(2009年)は金メダルゼロに終わってしまった。穴井の試合内容(準々決勝敗退)について、自分は全然怒るつもりはないです、投げにいった結果ですから。でもそんなの言い訳なんですよ。自分らが勝手にそう思っているだけで。世間一般からすると「穴井も負けた。金ゼロやないか」と。結果はその通りですから。
だから「Xデーはいつ来るのか」と思っていたら、自分が監督のときに来てしまったと。でも逆に言えば、今が一番のどん底ですから、あとはもう上へ、ひとつひとつ上がっていくしかありませんから。最終目標のロンドンに向けて、選手とともに頑張りますよ。

※2010年1月現在


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