著名な柔道家インタビュー

  

中村兼三(第2回)2/2

全日本男子ナショナルチームのコーチを経て、旭化成柔道部監督に就任した中村兼三氏。
指導者として柔道と向き合う中で感じたことや、選手育成の思いについて話を伺いました。

常に世界を意識しながら

常に世界を意識しながら

全日本のコーチと実業団の監督の違いは、刀造りで例えるならば「型作り」と「研磨」という役割の違いでしょうか。

ただ、良いものを作るという目標は共通のもの。それぞれに指導の方法は変われど、その選手が持っている能力を最大限に引き伸ばし、100%の状態で試合に送り出せるようにするという点に違いはありません。

それでも、ルール変更ひとつで柔道の流れは大きく変わりますし、実業団の監督になって以来、国際舞台から遠ざかっているので、「このままでは取り残されてしまうのでは」という不安も感じなくはありません。実業団の監督とは言え、世界に目を向けておかなければいけないと思っています。

知る程に深まる柔道の魅力

知る程に深まる柔道の魅力

選手として印象に残っている試合は、やはりアトランタオリンピックの決勝です。残り3秒で並んで旗判定(2-1)で勝ったのですが、どちらが優勢だったのか自分でも本当に分からなかったです。

また、翌年の世界柔道選手権大会(フランス・パリ)のこともよく覚えています。アトランタオリンピック後の自分は、調子が悪いわけではないのになかなか優勝できない時期が続いて、試合の1週間前に食中毒で入院もしました。そんな状況からの優勝だったので、特に嬉しかった記憶があります。

現役を引退してから気付くことや、指導者として柔道と向き合う中で見えてくるものもたくさんあります。「現役のときにこうしておけば良かった」とか、「こういう技に挑戦しておけば」と、あらためて柔道の奥深さを感じています。

もちろん競技自体も進化して行きますし、本当に知れば知る程、深めれば深める程、柔道の魅力も「難しさ」も理解できるようになります。どんな形であれ、柔道には一生涯携わって行きたいと思います。

目標は北京オリンピック以来の日本代表選手の輩出

目標は北京オリンピック以来の日本代表選手の輩出

地方に拠点を置いて頑張っている旭化成柔道部には、他のチームにはない一体感や団結力があり、それが強さの秘訣だと思います。延岡の選手は環境的に恵まれていない部分を反骨心にして頑張るし、東京や大阪の選手も合宿などでその姿を見て発憤する。お互いに良い意味で刺激し合うことで、ライバル意識やチームワークが育まれているのだと思います。

1948年の創部という歴史はありますが、「これが旭化成の柔道だ」という特別なスタイルを貫くわけではなく、選手それぞれの特長を伸ばして行くのが指導方針です。先程も話しましたが、自分で考える選手をひとりでも多く育て、全日本に送り出すことが監督としての自分の使命だと考えています。

実は北京オリンピック以降、旭化成からは世界大会に代表選手を送り出せていないんです。選手たちには「世界の舞台で戦っている姿を職場の方たちに見せたい」という気持ちも強いので、そのための環境を整え、日本代表として活躍できる選手を育てることが今後の一番の目標です。

そして、選手たちには、単なる勝ち負けではなく、柔道を通して色々な経験を積んで、「やっぱり柔道をしている人たちは素晴らしい」と職場に受け入れられるような人になってほしいです。それが会社への恩返しにもなりますし、そういう選手を育てることが監督としての重要な役目だと思っています。

インタビュー:2013年9月

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