「中村兼三」著名な柔道家インタビュー

中村兼三(第2回)

全日本男子ナショナルチームのコーチを経て、
旭化成柔道部監督に就任した中村兼三氏。
指導者として柔道と向き合う中で感じたことや、
選手育成の思いについて話を伺いました。

選手を「送られる側」から「送る側」へ

選手を「送られる側」から「送る側」へ

自分の心の中には、ずっと以前から旭化成柔道部の監督をやりたいという気持ちがありました。全日本のコーチ時代は、「世界のトップレベルで戦える選手を強化して、日本にたくさんのメダルを獲らせたい」という思いで指導にあたっていましたが、昨年、井上康生君が全日本男子の監督に就任してからは、「彼のもとに送り出せるような強い選手を育てよう」という思いで旭化成で指導しています。

井上監督には情熱もカリスマ性もありますので、全幅の信頼を置いています。外国人選手のレベルも年々上がっていますが、所属チームと全日本が上手く連携を取りながら、ライバルに負けない強い選手を育成しようという強い思いが、旭化成柔道部の監督になった理由です。

チームの拠点は宮崎県延岡市

チームの拠点は宮崎県延岡市

就任から半年が経ち、先日の全日本実業柔道個人選手権大会(以下、実業柔道個人)では、6階級にエントリーして4階級で金メダルを獲ることができました。

旭化成柔道部は、基本的に社員として仕事をしながら柔道をするというスタンスを取っていますので、チームの練習拠点は会社のある延岡市(宮崎県)です。選手たちは朝の6時15分から7時までトレーニングをして8時15分に出社。午後4時まで仕事をして、午後5時から約2時間の練習に取り組んでいます。

もちろん、働きながら練習をすること、地方では練習相手が少ないことなど環境面では厳しい部分もあります。それでも、現役を終えたあとのことを考えれば、仕事と柔道を両立させることは大きな意味がありますし、その部分を大学の先生方にも評価して頂いています。それだけに、実業柔道個人で獲得した4つの金メダルのうち、3つを延岡市を拠点にしている選手が獲ってくれたことは嬉しかったです。

自分で考えられる選手を育てたい

自分で考えられる選手を育てたい

指導の中で心掛けているのは「選手自身に考えさせること」。実業団のトップを目指す選手の中にも、しっかりと自分で考えて戦える選手と、言われなければできない選手がいます。

柔道は自分の強い部分と弱い部分を知り、どこで勝負をして行くのかが勝敗を左右します。その「勝負できる部分」は、日頃の練習で力を出し切ることでしか見付からないですし、自分で考えて作って行かなければならないものです。そういう意味では、東京や大阪を拠点にしている選手は、ある程度の実績もあり「自分でやらなければ」という部分をしっかり持っていると思います。

今はまだ準備段階ですが、今後は延岡市からも、たとえ監督・コーチが練習に立ち会わなくても、自らひたむきに考えて稽古できる選手を育てて行きたいですね。そうした土台ができれば、必ずチーム全体にも良い影響が広がって行くと思います。

会社や職場の方への恩返しの気持ち

会社や職場の方への恩返しの気持ち

もうひとつ、延岡を拠点としている選手には、いつも応援して下さる会社や職場の方たちへの感謝の気持ちを大切にしてほしいと思っています。

「今回は良かったね」とか「怪我で残念だったね」と声をかけて頂いたり、会社に行くことで周囲の期待を感じたりすることは選手にとって大きな支えになります。柔道へ真摯に取り組む姿勢を通して、その恩返しをしてほしいです。

なにも良い結果を残すことだけではなく、頑張っている姿や真剣に取り組む姿を見せられれば良いんです。自分も現役時代は、応援してくれる人たちの存在が本当に大きな力になりました。これからは柔道部の監督として、会社や職場の方たちに、たくさんの恩返しができる環境を作って行ければと思っています。

常に世界を意識しながら

常に世界を意識しながら

全日本のコーチと実業団の監督の違いは、刀造りで例えるならば「型作り」と「研磨」という役割の違いでしょうか。

ただ、良いものを作るという目標は共通のもの。それぞれに指導の方法は変われど、その選手が持っている能力を最大限に引き伸ばし、100%の状態で試合に送り出せるようにするという点に違いはありません。

それでも、ルール変更ひとつで柔道の流れは大きく変わりますし、実業団の監督になって以来、国際舞台から遠ざかっているので、「このままでは取り残されてしまうのでは」という不安も感じなくはありません。実業団の監督とは言え、世界に目を向けておかなければいけないと思っています。

知る程に深まる柔道の魅力

知る程に深まる柔道の魅力

選手として印象に残っている試合は、やはりアトランタオリンピックの決勝です。残り3秒で並んで旗判定(2-1)で勝ったのですが、どちらが優勢だったのか自分でも本当に分からなかったです。

また、翌年の世界柔道選手権大会(フランス・パリ)のこともよく覚えています。アトランタオリンピック後の自分は、調子が悪いわけではないのになかなか優勝できない時期が続いて、試合の1週間前に食中毒で入院もしました。そんな状況からの優勝だったので、特に嬉しかった記憶があります。

現役を引退してから気付くことや、指導者として柔道と向き合う中で見えてくるものもたくさんあります。「現役のときにこうしておけば良かった」とか、「こういう技に挑戦しておけば」と、あらためて柔道の奥深さを感じています。

もちろん競技自体も進化して行きますし、本当に知れば知る程、深めれば深める程、柔道の魅力も「難しさ」も理解できるようになります。どんな形であれ、柔道には一生涯携わって行きたいと思います。

目標は北京オリンピック以来の日本代表選手の輩出

目標は北京オリンピック以来の日本代表選手の輩出

地方に拠点を置いて頑張っている旭化成柔道部には、他のチームにはない一体感や団結力があり、それが強さの秘訣だと思います。延岡の選手は環境的に恵まれていない部分を反骨心にして頑張るし、東京や大阪の選手も合宿などでその姿を見て発憤する。お互いに良い意味で刺激し合うことで、ライバル意識やチームワークが育まれているのだと思います。

1948年の創部という歴史はありますが、「これが旭化成の柔道だ」という特別なスタイルを貫くわけではなく、選手それぞれの特長を伸ばして行くのが指導方針です。先程も話しましたが、自分で考える選手をひとりでも多く育て、全日本に送り出すことが監督としての自分の使命だと考えています。

実は北京オリンピック以降、旭化成からは世界大会に代表選手を送り出せていないんです。選手たちには「世界の舞台で戦っている姿を職場の方たちに見せたい」という気持ちも強いので、そのための環境を整え、日本代表として活躍できる選手を育てることが今後の一番の目標です。

そして、選手たちには、単なる勝ち負けではなく、柔道を通して色々な経験を積んで、「やっぱり柔道をしている人たちは素晴らしい」と職場に受け入れられるような人になってほしいです。それが会社への恩返しにもなりますし、そういう選手を育てることが監督としての重要な役目だと思っています。

 

インタビュー:2013年9月

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