井上康生(第2回)2/2
現在の柔道界について
今回の大会を経験して感じたことのひとつとして、「柔道の質」が私の現役時代とは変わってきたのではないか、ということですね。その背景にはルールの変更もあると思いますが、何よりも柔道全体のレベルが上がってきたことが大きく影響しているのではないでしょうか。
トップレベルの選手と言うよりも、下のレベルの選手たちが非常に底上げされてきていると強く感じています。
昔の大会の場合、「1・2回戦はそこそこの相手、ベスト8くらいから徐々に強豪になってくる、そこからが勝負だ」と言われることも多かったのですが、今は1回戦から気が抜けず、最初から死闘、死力を尽くした戦いが繰り広げられることが多くなったように思います。
また、今様々な場所で言われている「柔道」と「JUDO」。「JUDO」は、国独自の格闘技を用いた柔道、言わば世界の格闘技の複合体なのではないかと私は強く感じているのです。我々は「柔道発祥国である日本の柔道」を体現していく中で、「柔道とはこういうものだ」ということを見せていく必要があると思いますね。
今後の目標
周りでは「復活」など、様々な言葉が飛び交っているようですが、今回の大会はまた新たなスタートに過ぎないと私は考えています。上がることは非常に時間のかかること。しかし落ちるのは一瞬です。
私自身、柔道というものを心から愛している人間のひとりとして、また新たに気を引き締め直して皆で次に向かう、今以上の進化を遂げていくということが、とても大切なのではないかと思います。
柔道が大会で勝てる競技ということも、もちろん魅力のひとつだと思いますが、社会で認められ、「価値のあるものだ」と言われる競技であってほしい。それが50年、100年とこの柔道が生き続けるきっかけになるのではないかと私は考えています。
また今回の大会を経験した中、終わった中で、「様々な想定をした上での準備」の重要性を学びました。やはり、それなくして金メダルはないのではないかと思います。
次の大会で私がどの立場で携わっていくのかは分かりません。しかし、柔道家のひとりとして、また選手たちを勝たせたいという強い思いを持っているひとりとして、どんな形でも選手たちのサポートをしていきたいです。私の「最強かつ最高の選手」という目標に向けて、常にぶれることなく選手の育成・サポートをしていきたいと思っています。
「東京」を目指す柔道家へのメッセージ
4年後に開催される東京大会。これは本当に一大イベントだと思います。人生において、これほど生きがいを感じながら目標に向かって頑張れるときはそうありませんので、狙える選手はとことん上まで狙ってほしいです。
今回のリオデジャネイロ大会に出場した選手たちを見ていると、やるかやらないか、変われるか変われないかは、自分次第であるということを強く感じます。不可能なことも自分自身で変えられると自分の可能性を信じて、東京に向けてすべての情熱を注いでもらいたいです。
また、出場するだけが価値ではなく、皆さんが何らかの形で大会や柔道にかかわっていくことが、これからの日本柔道にとって大切なことなのではないかと強く思います。そうして盛り上げて頂けたなら、日本の柔道はさらに発展していくと感じますね。
私自身もこのビッグイベントに片足でも両足でも突っ込んでいたいので、今後も全力で追いかけていきたいと思います。
インタビュー:2016年8月