著名な柔道家インタビュー

藤田弘明 全日本柔道連盟副会長&九州柔道協会会長インタビューその1

全日本柔道連盟副会長で、九州柔道協会会長、福岡県柔道協会会長といくつもの要職を務め、多忙な日々を過ごしておられる藤田弘明氏に、柔道との出会いやアトランタオリンピック(1996年)と、シドニーオリンピック(2000年)の2つの大会で強化委員長を務められたときのご苦労、そして将来の展望などをお聞きした。

藤田弘明氏

若年層の育成

藤田弘明氏私はいつも日本の柔道の基盤は高校柔道にあると信じており、高校生にメンタルの強い選手が多く出てこないと日本の柔道に将来はないと断言します。そういう意味で何人も勝ち抜いていかなければならない「金鷲旗高校柔道大会」はとても大事な大会と位置付けています。
点取りと抜き勝負を巧みに使い分けて試合を進めていく難しさや、スタミナなど体力的な苦しさがあります。でもこの大会で培った経験は将来に繋がりますし、自分の基礎となって精神的な強さが身に付きます。

さらにその底辺である子供たちの育成も大変重要なことです。私たちが子供の頃は、遊びのルールもみんなでつくっていきました。けんかもしましたがお互いの決めごとの中で行ない、そうした中で感受性も養われていったと感じます。

現代では子供同士のつきあいが非常に希薄になり、みんなで遊びを工夫したり相手を思いやる場が失われています。子供が自ら学習できる場所がだんだん減っているわけです。それは子供が望んでなったわけではなく、大人に責任があります。家庭から子供を出さなくなったり、外で遊ぶ子供も少ないため友達と直接会話する機会も減りました。
今、日本がこのような社会になったのも、子供が遊びを通して学ぶことがなくなったことに大きな原因があると思います。だから私は子供たちに居場所を与えてあげたいですし、伸び伸びと過ごせる場所を提供したいと思っています。

それともうひとつは、今の子供たちは集団生活を送る機会が与えられないことです。私は競技者育成のために「柔道部福岡クラブ」をつくりましたが、ここでは毎年合宿を行なって子供たちに集団生活をさせています。
役割分担や規則などを子供たちに任せると、6年生の年長者は自発的に行動し、集合や練習後の掃除も率先して行なうようになります。こうした集団生活を送りながら、思いやりやいたわりの心を育んでいます。


恩恵の還元と義務

私は日本柔道の上部団体で8年くらい全日本柔道連盟副会長を務めていますが、今は若年層の発掘強化を行なっています。
小学校高学年から中学生までで良い人材を発掘し、指導者や環境などを整備してその能力を伸ばしてあげられるよう、日本の柔道の基盤づくりをお手伝いしています。
これは私たちが受けた恩恵の還元であり、我々の世代に課せられた義務と思っています。私たちが育った時代は戦後間もない頃でしたが、それでも多くの方たちが支えてくれました。これからは私たちが次の世代に繋げていかなければなりません。

柔道を魅力あるスポーツとして育てていきたいと思っています。剣道や空手はオリンピック種目にはなく、日本の武道の中では柔道だけが世界を魅了しています。その精神を受け継ぎ、子供たちに感動や夢、希望を見られるようにするのが私たちの役目です。
九州各県の会長にも、柔道が楽しくできるような体制を整えて下さいとお願いしています。底辺をしっかり築き、下から支えることが日本の柔道をより強くすることになります。

心を育む第一歩

藤田弘明氏私は子供たちにいつも「自分の打ち込めるものを何かひとつ見つけなさい」と言っています。スポーツだけでなく、芸術や勉強でも何でもいいから自分が夢中になれるものを見つけることによって、それを追究する心や将来の夢が芽生えます。それを大人がしっかりと受け止めて伸ばしてあげることが大切ではないでしょうか。

子供たちをもっとゆったり育てることで人間らしい心を育まなければなりません。自分の好きなことを見つけるのはその第一歩です。そのときに柔道を選んでもらえると嬉しいですね。
しかし、柔道を選んだすべての人が日本代表やチャンピオンになるわけではありません。苦しさや厳しさに負けず「道」を貫ける人にその資格が与えられます。私たちは柔道を通して世界の晴れ舞台に出られる人、また世界に通用する人を育てなければなりませんし、柔道は人間育成の基盤であり、本質でもあることもしっかり認識しておく必要があります。


※2010年2月現在


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