著名な柔道家インタビュー

藤田弘明 全日本柔道連盟副会長&九州柔道協会会長インタビューその1

全日本柔道連盟副会長で、九州柔道協会会長、福岡県柔道協会会長といくつもの要職を務め、多忙な日々を過ごしておられる藤田弘明氏に、柔道との出会いやアトランタオリンピック(1996年)と、シドニーオリンピック(2000年)の2つの大会で強化委員長を務められたときのご苦労、そして将来の展望などをお聞きした。

藤田弘明氏

柔道との出会い

私が柔道を始めたのは高校に入ってからで、柔道家のスタートとしては遅かったですね。

小学校から中学1年生までは野球をやっていましたが、部員数が多く、球拾いばかりで面白くなくて辞めてしまいました。体格が良かったので、相撲などもやってみましたが、中学3年生の秋に、近所で柔道の大会が開かれ、試合を見たとたんに柔道をやろうと思いました。
間近で見た柔道の試合はとても印象に残り、柔道が自分にも合っていると思い、それで高校に進学するとすぐに柔道部に入部したのです。

大学時代は学生チャンピオンと稽古

藤田弘明氏高校を卒業したあとは日本大学へ進学し、大学でも柔道に打ち込みました。
当時、2年生で学生チャンピオンになった増田さんと毎日30分一緒に稽古しており、相手が「参った」と言うまで続けるわけです。学生チャンピオンですからものすごく強くて、いつも投げられてばかりいましたね。「こんなに強い人がいるのか」と思いましたが、自分から「参った」とは言えませんし、投げられてもどんどん向かっていきました。

合宿になると午前、午後とずっと増田さんが相手でした。あとで聞くと私のような、腰を引かずにまっすぐ立つスタイルが練習相手としてやりやすかったようです。結局、彼が卒業するまで2年間ずっと一緒に稽古したことが大学時代のいい思い出で、おかげで私も上達しました。それで3年生になってようやく選手になることができました。
大学時代の練習は厳しかったのですが、夢中になって稽古していましたから辛いと思うことはありませんでした。ただ寮生活は食事や洗濯など身の回りのことを全部自分でしなければならないので、そうした環境面の辛さはありましたね。
また、柔道を通して多くの良き仲間と出会い、お互いに助け合ったりして柔道を上達させていきました。このことは今でも大きな財産となっていますし、柔道をやっていて一番良かったと思えることです。

試合をしないと結果は分からない

藤田弘明氏指導者としては、アトランタオリンピック(1996年)、シドニーオリンピック(2000年)で強化委員長を務めたわけですが、それぞれの大会とも思い出深いものがあります。

アトランタオリンピックでは、男子では小川(直也)、中村(佳央)、吉田(秀彦)、古賀(稔彦)が続けて敗れ、あと3階級を残して金メダルがひとつもない状況でした。そこで私は重苦しいムードを払うため、監督、コーチと選手全員を呼んで飲み会を開いてみんなの気分転換を図りました。監督の山下(泰裕)君は、責任を感じてか禁酒していましたが、私は「まぁ、いいじゃないか。この責任は俺にあるから」と言って誘い、残りの試合の健闘を誓い合いました。
それで(中村)兼三が金メダルを獲ったのです。そして野村(忠宏)も決勝でオジョギン(ロシア)を相手に5分間攻め通して相手から一本を奪い、見事に金メダルを獲りました。

女子は、谷(旧姓:田村)の金は確実視されていましたが、決勝でケー・スンヒ(北朝鮮)に敗れてしまう波乱がありましたね。相手の組み方に惑わされたのか、スリップダウンをして旗判定で負けたわけです。確実に獲れる人が獲れなかったショックはありましたが、逆に恵本(裕子)のように意外な選手が金メダルを獲ることもありました。実際に試合をしてみないと、結果は分からないということを知らされたアトランタオリンピックでした。


日本人だけの謙譲の美徳

シドニーオリンピックでは、アトランタオリンピックとは反対に軽量級から試合が始まり、谷(旧姓:田村)野村がそれぞれ金メダルを獲ったため、初日からずいぶん楽な展開となりました。これによって選手のモチベーションも高まりましたし、井上康生や滝本(誠)が金メダルを獲って、最終的に金4つ、銀2つ、銅2つを獲得することができました。

この大会で印象深いのが、篠原(信一)ドゥイエ(フランス)の決勝での誤審ですね。勝ったはずの試合が負けになり、周りのみんなが不服として抗議をしたりしました。
しかし篠原は「自分が弱かったから負けたんだ」と一切の言い訳をせずに負けを認めました。これは日本人だけの謙譲の美徳で、武道家として素晴らしいことだと私は思います。

※2010年2月現在


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