著名な柔道家インタビュー

天野安喜子 国際A級審判員インタビューその3

「かぎやぁ〜」の掛け声で親しまれる夏の風物詩、花火。その鍵屋の十五代目当主の天野安喜子さんは柔道の国際審判員としても著名です。昨年の北京オリンピック、今年8月のロッテルダム世界柔道選手権大会でも、IJF(国際柔道連盟)より選出され、日本の代表として審判を務めました。

鍵屋当主、天野道場副館長、そして一児の母として多忙な毎日を過ごすと同時に、国際審判員としても活躍する天野さんにお話をお聞きしました。

天野安喜子氏

鍵屋十五代目のプレッシャー

天野安喜子氏 鍵屋十五代目の襲名式を迎えるまでは、父のあとをただ単に継ぐんだという意識だけだったから継げたんですけど、その1年後ぐらいからものすごいプレッシャーを感じるようになりました。

例えば全く関係ないと思われるような教育界から十五代目の考えを聞かせてほしいという質問がきたり、花火で何かあれば、その責任を背負わなきゃいけないですから、そういった社会的な責任の重さを感じたり。 それからは、自分が発する一言一言を、これは公になっても大丈夫か確認してからお話をすることが多くなってきました。あと、笑顔は絶対に絶やさないと心に決めています。

周りはみんな職人ですから、十五代目といったところで、「肩書きがなんぼのもんじゃい」という世界です。私の場合は、幸いにして小学2年生の頃から、跡継ぎと言われていたので、職人との顔合わせはものすごく多かったんです。
それでも、大学を卒業して、正式に現場に入った当初は、父の話を受けて、私が指示を出しても職人さんが全然話を聞いてくれないというようなことがかなり続きました。


花火と審判に関してはとことんこだわる

天野安喜子氏 その後、私が花火作りの修行に数年出て、戻ってからちょっとしたアクシデントがあって、それをクリアしたときに、やっと職人さんたちとの信頼関係ができてきたのかなと。

それから、私に直接「アッコちゃんこれはどうする?」という質問がくるようになりました。それが26、27歳ぐらいですかね、それからはとてもいい環境で仕事させてもらっています。
職人さんというのはみんなすごく熱いんですね。だから、その職人さんが何を言いたいかとか、何を求めて私に質問してきているのかということを、表面だけじゃなくて、きちんと理解して対応することで信頼関係ができていくと思うんです。職人は思ったことをパンパン言ってきますからね、気持ちいいですよ。

花火作りの修業は山梨へ行ったんですが、日大柔道部に在籍していた学生時代以上に、人間関係も含め、いろいろと難しい世界でした。
でも、そこで社会人としてハングリー精神というのに初めて気付いたり、私が成すべきことは何だろうと自身が歩む道を定めたり、学んだことはたくさんありました。 終えたときに「普通だったら10年掛かるところをすごいねぇ」とお誉めの言葉を頂いたのが自分の中では誇りになっています。

花火には色、形、光、音という特質があるので、それをすべて指定してデザインするんですが、修行してきたことで、具体的に「これを作ってもらいたい」と指示できるようになったら、どうしてもこだわりたくなってしまって。
普段の生活ではあまりこだわりはないというか、どっちかというと抜けている部分が多いんですけど、花火のことと柔道の審判に関してはものすごくこだわってしまうんですよね。


安心して選手を送り出してもらえる審判に

今後は審判を通して、日本柔道界に貢献 たぶん、私は性格的に、忙しいと充実するタイプだと思うんです。だから「明日休んでいいよ」と言われたとき、1日ぐらいだったら、マッサージに行ったりとか、子供とずっと触れ合ったりとかするんですけど、「1週間遊んできなさい」と言われたら、たぶん何をやっていいのか分からなくなってしまう。逆にストレスが溜まっちゃうタイプだと思うんです。

社会人になってからは「今日は1日休み」という日は、年間を通して数える程です。
学生時代は、休みはあったし、子供が生まれる前までは自由な時間が欲しいという欲求がものすごくありましたけど、子供が生まれたあとは、仕事と子育ての両立が忙しくて自分の生活リズムがなくなって。 それに慣れてくると、べつに自由な時間がいらなくなってくるんですね。プラス、仕事でも少しずつ自分の位置付けというのが変わってきていますから、重責を負いますが、反面、仕事の中でもストレスを解消できるようになって自分の時間が欲しいとも思わなくなってきました。
逆に時間があると「何かできるんじゃないか」と探しちゃうんですよね。

これからもまだまだやりたいことはたくさんあります。花火ですと、「十五代鍵屋」の印半纏(しるしばんてん)を頂いたときに、「15代目として、何かを残せよ」とも言われています。私は、花火の音が好きなので、音に関連した何かを研究して残していきたいと思っています。 柔道に関しては、審判員としてオリンピックという大舞台には立てましたが、1年が過ぎた今、自分の中では「通過点」だと思っているので、今度は日本柔道界に対して何かお役に立てることを見つけて、貢献していきたいなと思っています。

女性の審判員の質がどんどん高くなり、「男性」「女性」という区別の言葉が聞かれなくなるぐらいにはなりたいなと、そうなってもらえたらいいなと思いますし、「あの審判員にやってもらうと、安心して選手を試合に送り出せるんだよ」と言われるところまでいけたらいいなと思っています。


※2009年10月現在


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