向翔一郎 強さの秘密

総合格闘技の試合をヒントにして新しい動きを取り入れるなど、型にはまらない向翔一郎。自由奔放とも言えるその柔道スタイルで、2018年の柔道グランドスラム・パリ、2019年の全日本選抜柔道体重別選手権大会などを制覇した。柔道ファンならずとも魅了する、向の型破りな柔道が、東京五輪(柔道)の大舞台で見られる日も近い。

※2019年9月2日現在

むかい  翔一郎  しょういちろう

向翔一郎
生年月日
1996年2月10日
所 属
綜合警備保障:ALSOK
出身道場
白根柔道連盟凰雛塾
出身大学
日本大学
2017年
  • 全日本選抜柔道体重別選手権大会 90kg級 優勝
  • アジア柔道選手権大会 90kg級 3位
  • ユニバーシアード競技大会 柔道競技 90kg級 3位
  • 講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 90kg級 優勝
  • 柔道グランドスラム東京 90kg級 3位
2018年
  • 柔道グランドスラム・パリ 90kg級 優勝
  • 全日本選抜柔道体重別選手権大会 90kg級 3位
  • 講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 90kg級 3位
  • 柔道グランドスラム大阪 90kg級 優勝
2019年
  • 全日本選抜柔道体重別選手権大会 90kg級 優勝
  • 東京世界柔道選手権大会 90kg級 2位

向翔一郎 とは

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柔道グランドスラム大阪2018 表彰式

向翔一郎は性格も柔道も奔放。これが良い方向に出た場合は大勝ちするのだが、悪い方に作用すると思わぬ苦戦や敗戦の憂き目を見ることになる。本人もその辺は自覚していて、「自分は性格的に飽きっぽい。飽き症と言うんですかね」と苦笑いするほどだ。

こうした向の柔道スタイルが如実に表れたのが2018年。この年は、2月の柔道グランドスラム・パリを6試合すべて一本勝ちという抜群の内容で初優勝をした。直前に開催された2017年11月の講道館杯全日本柔道体重別選手権大会で優勝、同年12月の柔道グランドスラム東京3位と合わせて一躍、「向翔一郎ここにあり」と関係者、ファンに知らしめたのだ。

柔道グランドスラム・パリでは準々決勝でニコロス・シェラサディシビリ(スペイン)を横四方固、決勝ではベガ・グヴィニアシヴィリ(ジョージア)を得意の背負投で一蹴。まさに、奔放さが吉と出た大会だった。

シェラサディシビリは、2018年の柔道ワールドマスターズ・広州の優勝者で、現在は世界ランキング1位(2019年7月30日現在)。23歳と若く、これからも向と鎬を削るであろう強敵だ。

グヴィニアシヴィリは、2015年の世界ジュニア柔道選手権大会で優勝し、2015、2017年のワールドマスターズ、柔道グランドスラム・デュッセルドルフも制覇した強豪。

向は「2人ともパワーもあるし、決め技も持っているので手強い」と言うが、2人に勝ったことで自信を深めたことだろう。

2019年全日本選抜柔道体重別選手権大会

奔放さが裏目に出てしまったのは2019年の柔道グランドスラム・パリ。「いけると思っていたが雑な試合で墓穴を掘った」と本人は振り返る。

直前の柔道グランドスラム大阪(2018年11月)では、決勝でこれまで何回もグランプリやグランドスラムで優勝、準優勝したことがある実力者、ノエル・ファントエンド(オランダ)に「指導3」で優勢勝ち。

だが、勢いに乗って臨んだ柔道グランドスラム・パリの4回戦で、一瞬の隙を衝かれイスラム・ボズバエフ(カザフスタン)に小外刈りで一本負け。3位決定戦でも長澤憲大(パーク24)に延長戦の末、抑え込まれて一本負けをした。

「あのときは落ち込みました。でも、誰が悪いわけではない、自分の責任。飽きっぽい性格は脇に置いて、コツコツとやることをやらねばとつくづく思いました」と向は話す。

敗戦をきっかけに自分の心や柔道スタイルを見直したことにより、東京五輪(柔道)が近づいたと言えるかもしれない。

向が「世界で戦える選手になれる」と自信を持ったのは、実は勝った試合ではなく負けた試合だった。「2014年、日本大学1年のときに世界ジュニア(柔道選手権大会)に出場したんですが、2回戦で負けたんです。でも、この大会を通じて、自分なら世界レベルの選手になれると実感しました」と振り返る。

2019年全日本選抜柔道体重別選手権大会

柔道を始めたのは4歳のとき、姉に続いて始めた。本格的にやり始めたのは小学校4年生となり、新潟・白根柔道連盟凰雛塾に入門してからだ。

中学生になると、上京して今はなき講道学舎(弦巻中学校)に入門。だが、環境が合わなかったために富山県雄山中学校に転校。この頃はあまり練習に身が入らず、残した実績はほとんどない。

高岡第一高校に進学して柔道部に入ったが、中学時代と同様に練習に打ちこめなかった。しかし、中学時代は簡単に勝っていた選手に試合で負けたことにより目が覚めて、心を入れかえる。たるんでいた分を取り返すように稽古に身を入れ、富山全国高校総合体育大会(インターハイ)で5位という結果を残した。

2014年、向はスカウトされ日本大学に入学。それまでは無名だったが、全日本ジュニア柔道選手権大会でいきなり優勝し、関係者の目にとまった。

日本大学柔道部では、高校時代に無名だった選手が力を付けて活躍することがよくある。金野潤監督の良いところを伸ばす指導方針の賜物だろう。雑なところが出ると思わぬ苦戦をするという悪癖を本人に自覚させつつ、奔放さと地道さとを両立させ、「試合であがったことはあまりない」という勝負度胸を大いに伸ばす指導を、金野監督は向に行なった。その結果が全日本ジュニア柔道選手権大会優勝であり、以後の華々しい戦績につながったのである。

柔道グランドスラム大阪2018

向は2016年の講道館杯全日本柔道体重別選手権大会で3位入賞し、2017年の全日本選抜柔道体重別選手権大会では、元全日本柔道選手権大会チャンピオンの加藤博剛千葉県警察)を破って優勝。90kg級の国内トップクラスの一角として確固たる地位に昇りつめた。

この頃は、2016年リオデジャネイロ柔道競技(五輪)で金メダルを獲得した第一人者のベイカー茉秋日本中央競馬会)が左右の肩の故障で試合に出ていなかったが、向の攻撃的な柔道は高く評価され始める。

向の柔道は左組みからの背負い投げや内股、大外刈りに、勝負を決定付ける一発を秘める。相手を崩してからの寝技も巧い。また、「自分は、勝負度胸はあるほうだ」と言うように、大舞台でも臆することはないのだ。

そんな向だが、柔道選手として大ピンチになったこともある。時間にも奔放だったことから大学の練習時間に何回も遅刻。4年生のときに、とうとう柔道部への出入りが禁止となり、さらには退寮も余儀なくさせられた。

それでも、向は他大学や警視庁への出稽古で必死に力を蓄え、2017年の講道館杯全日本柔道体重別選手権大会で優勝。改心して真面目に練習を続けた成果を認められて出入り禁止は解かれた。「あのときはピンチだった。金野先生にはご迷惑をかけた。でも、あれで自分の生活態度もビシッとするようになった。こんな自分を導いてくれた金野先生に恩返ししなくては」と向は神妙に振り返る。

柔道グランドスラム大阪2018

2019世界柔道選手権東京大会の代表になった向は、東京五輪(柔道)代表選手の座に手が届く位置にいると言えるだろう。2019世界柔道選手権東京大会で優勝して、さらに11月の柔道グランドスラム大阪で優勝すれば、代表に内定する可能性は高い(強化委員の三分の二以上の賛成が必要)。

東京五輪(柔道)代表選手の座をめぐってライバルになるのが、今回の世界選手権では団体の代表となっている新進気鋭の村尾三四郎(東海大学1年)。その他には、2019年の柔道グランドスラム・パリの3位決定戦で敗れた長澤憲大がいる。

長澤は、2018年のバクー世界柔道選手権大会では3位入賞の実績も持っている。だが、今年の全日本選抜柔道体重別選手権大会では向が「指導3」で勝っていることもあり、長澤に対する苦手意識はないだろう。

そしてもう一人、ベイカー茉秋。ベイカーは、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)での金メダル獲得以降は肩の手術や燃え尽き症候群で一時不調だったが、心気力を養い、ここへきてしっかりと復調の兆しを見せており、今は迷いなく東京五輪(柔道)を目指す覚悟だと言う。組み手の巧さと修羅場をくぐり抜けてきた自信が、ベイカーの財産。「後の先」も巧みで25歳とまだ若く、向にとっては一番やっかいな相手になることが予想される。

「東京五輪(柔道)代表はもちろん狙っている。そのための準備はしっかりやりたい。まずは2019世界柔道選手権東京大会で優勝し、自分が第一人者だということをアピールする」と向は話す。2020年の東京五輪(柔道)の代表獲得にしっかりと照準を合わせている。

※ 掲載内容は2019年6月30日までの実績とインタビューからの情報になります。

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東建コーポレーションが運営する柔道ポータルサイト「柔道チャンネル」では、全日本柔道連盟オフィシャルパートナーとして、柔道にかかわる様々な情報を発信しています。東京五輪(柔道)に向けての注目選手として、男子90kg級の向翔一郎選手を特集。得意とする左組みからの背負い投げや内股、大外刈りは、試合を決定付ける威力を秘めています。さらに、相手を崩してからの寝技も世界に通用するレベルです。2019世界柔道選手権東京大会で優勝すれば、2020年の東京五輪(柔道)代表選手にふさわしい実力を持っていることを大きくアピールできます。夢の舞台に向けて突き進む、向選手を応援しましょう。

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