世界の柔道事情

フランス・パリ

世界No.1の柔道人口を誇るフランス

フランス・パリ

いまや、オリンピックで柔道チャンピオンを出すほどになったフランス。日本の柔道人口約20万人に対し、フランスでは現在約80万人で、大変な人気を誇ります。必修科目として教えている公立小学校もあれば、お稽古ごととして習っている女性の姿も数多く見受けられます。
フランスと柔道の出会いは1935年。「フランス柔道の父」と言われる、川石酒造之助(かわいし・みきのすけ)の来仏にさかのぼります。川石氏は外国人に対する柔道教授法を考案し、日仏柔道クラブを創立しました。第二次世界大戦中は日本に帰国したものの、終戦後に再び渡仏し、1950年代から柔道ブームが始まりました。

フランス人を魅きつけた柔道の魅力とは?

柔道精神の核である「規律正しさ」や「厳格さ」は、どちらかと言うと一般的なフランス人の性格の対極にあたります。お店の前で列を作って並んでいても、割り込みしてくる人が多く、また時間にルーズなのも普通のこと。
でも、そんなラテン気質のお国柄だからこそ、彼らは柔道のなかに新鮮さや、学ぶべきものを見い出すのかもしれません。また、八百長などお金にまつわる暗いスキャンダルや暴力事件が尽きないスポーツがある一方で、フランス柔道にはそのようなイメージが皆無であることも、人気の理由のひとつと言えるでしょう。

エリック・パリゼさんの柔道教室

柔道ブームの火付け役の教えを後世に

エリック・パリゼさん

フランスの柔道ブームの火付け役は、川石酒造之助の弟子である故ベルナール・パリゼ氏でした。彼は、フランス人で初めて世界柔道選手権大会(1956年)に参加。58年の大会では銅メダルを獲得し、94年には9段に昇格されたそうです。
現在は、そのご子息であるエリックさんが「Club Eric Pariset」の校長として、当身技(あてみ)を中心とした柔術を教えています。エリックさんは「柔道は7歳から父親に習い、17歳で柔術に専念するようになりました。父は、あまり言葉で説明することはなかったですね。ただ黙って練習あるのみ。そういう身体の訓練が人間としての内面をも自然に磨いていく、という教え方でした」と、父・ベルナール氏の指導を思い出しながら話してくれました。

「柔道」より「柔術」が好まれる背景とは

フランス人が柔道を習うのは、「集中力を付けたい」「礼儀正しくなりたい」といった理由がほとんどで、実際のところ大会に出場して勝ち負けを決めることにはあまり興味がないようです。
エリックさんによると、「パリでは、柔道をやって強くなろうという人はとくに少ないですね。どちらかというと、バリエーションに富んだ柔術を学んで楽しみたいとか、護身術を学びたいという人がほとんどです」とのこと。国や都市によって、様々なとらえ方や楽しみ方があるようです

柔道を練習する子どもたち

練習はまず、基本のお辞儀から

エリックさんと、生徒たち

大人の平均練習時間が週に2〜3時間であるのに対し、子どもたちは学校のない水曜日や土曜日に週1時間程度の練習が一般的。子ども向けの授業は、日本武道ならではの礼儀から始まり、ウォーミングアップ、そのあとは形の稽古というプログラム。
お辞儀をする習慣のないフランスでは、それだけ教えるのにもずいぶんと時間がかかるそうです。笑ってしまう子、照れてしまって頭が下げられない子もいるのだとか。
エリックさんが教えている当身技(あてみ)柔術は日本ではあまり知られていませんが、もちろん昇段試験などもあり、黄色やオレンジ色の帯をつけられるようになることが、子どもたちの励みのようです。

フランス柔道の特徴でもある「指導者の育成」

フランス柔道の先駆者であった故ベルナール・パリゼと、アンリ・クルティンヌ(2007年10段に昇格)は優秀な指導者育成に力を入れ、これを組織的に行なってきました。55年以降、柔道指導者になるためには国家試験に合格することが義務付けられ、以来、優秀なフランス人指導者が海外に出向いて教授することも多くなったそうです。
「ただ学ぶだけでなく、それを後世に伝えていこうとする気持ちも大切ですから」というエリックさん。こうしたフランスの伝統を重んじる土壌が、柔道発展に貢献したとも言えるかもしれません。

エリックさんの道場のトロフィーや記念品など

エリックさんから日本の皆さんへ

エリック・パリゼさん

「日本柔道は、見ていて断然美しい!惚れ惚れしますね。フランス人は確かに強くなり、たくさんメダルを獲得できるようになりましたが、力の強さで勝ってしまうことがほとんど。
でも、柔道は勝ち負けだけの問題ではありません。日本の柔道家のテクニックを見ていると、『ああ、やっぱり流れている血が違うな』とつくづく思います。私たちは、まだたくさん日本に学ぶことがあると思います。日本柔道は、やっぱり永遠にモデル(模範)ですね」

Club Eric Pariset Bastille

※記事の内容は2008年7月現在の情報となります。


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