世界の柔道事情

ブラジル・サンパウロ

海を渡った柔道、南米の大国ブラジルに根付く

ブラジル・サンパウロ

日本の約23倍の面積を有し、アマゾン熱帯雨林など大自然が広がる一方で、近年では、BRICs(ブリック ス)の一員としてロシア、インド、中国と並んで経済の発展が著しい南米の大国・ブラ ジル。
この国で人気のある武術・格闘技と言えばブラジリアン柔術ですが、その源流に あるのが日本から伝えられた柔道です。当初は日本移民を中心に競技されていましたが、 少しずつブラジル社会にも浸透し、今では国を代表する選手の9割以上を日系人以外が占 めています。
身体的に強くなりたいだけではなく、「メンタル面を鍛えたい」と道場の 門を叩くブラジル人も少なくありません。

ブラジルで日本人が活躍、初の五輪メダルも

1920年代初め、通称『コンデ・コマ』で知られる前田光世氏によってブラジルに伝え られた柔道。その後、1938年に移住した小川龍造氏らが道場を開き、「ブラジル柔道 のパイオニア」として競技普及に努めました。
1972年、ブラジルに帰化した日本人、 石井千秋氏(栃木県出身)がミュンヘンオリンピックで柔道による同国初の五輪メダル をもたらすと、柔道人気がぐんとアップしました。100年以上の伝統を誇り、総面積17万平方 メートルの南米最大のスポーツクラブ、サンパウロ市の「エスポルテ・クルーベ・ピニ ェイロス」の柔道場でも、現在、30人以上のトップ選手が稽古に励んでいます。

南米最大のスポーツクラブ「エスポルテ・クルーベ・ピニ
ェイロスの柔道場」

柔道一家に誕生、天性の才能を発揮しブラジル代表へ

石井ヴァニア幸恵さんの練習風景

「エスポルテ・クルーベ・ピニェイロス」は、2008年北京五輪に水泳や陸上競技など40人の選手団を送り込んだ名門。 柔道部に所属の日系ブラジル人、石井ヴァニア幸恵さんも、女子63キロ級ブラジル代 表としてシドニー、アテネの両五輪に出場した実力派です。
父は五輪メダリストの石井 千秋氏、また、5歳違いの姉・タニア千恵さんもバルセロナ五輪に出場しています。
ヴァニアさんは、北京への切符は惜しくも逃したものの、同大会の柔道競技コメンテー ターとしてメディアで大活躍しました。

柔道を通して父と交流、姉に憧れて世界を目指す

4歳で柔道を始めたヴァニアさん。きっかけは「父ではなく母に勧められて。無口な父 とコミュニケーションを取るための手段でしたね」と語ります。
最初は道場の友だちと 遊ぶのが好きで続けていたヴァニアさんですが、先輩格の姉・タニアさんの美しい技に 憧れ、10歳頃から「どうせやるなら世界を目指したい!」と本気で稽古にのめり込むようになりました。その後、徐々に頭角を現し、91年末から94年半ばまで日本の小松製作所へ柔 道留学、同実業団全日本2連覇に貢献しました。
ブラジルに帰国後も94年から99年ま で南米大会で5回優勝、パンアメリカン柔道大会では99年カナダ大会で金メダル、2003年ドミニカ大 会で銀メダルと、数々の戦績を残しています。

石井ヴァニア幸恵さんの練習風景

打ち込みと乱取り、日本風の基礎練習がメイン

エスポルテ・クルーベ・ピニ
ェイロスの稽古の様子

ヴァニアさんは月曜日から金曜日まで、午前中を筋トレに費やし、午後7時から1時間 半、スポーツクラブで稽古に励んでいます。稽古の内容は基本の打ち込みの他、5〜10分の乱取りなど。
「日本からの先生がたくさんいたので日本風の基礎練習が多かったで すね。最近は、ヨーロッパ風の足を取る柔道も混ざっています」と話すヴァニアさんの 練習相手は、自分よりも身体の大きな男性ばかり。それでも果敢に、本番さながらの気 迫で相手の襟を取りにいきます。

仲間とともに、「気合い」で貧しい子どもたちを助けたい

「あと1年は選手として燃え尽きたい」と語るヴァニアさん。実は今、10年来温めて きた夢の実現に向けて、着々と計画を練っているとのこと。
シドニー五輪銀メダリスト のカルロス・オノラット氏ら3選手とともに『PROJETO KIÀI(気合いプロジェクト)』 を提案、貧しい子どもたちが麻薬や犯罪に手を染めないよう、放課後などの自由時間に 柔道をボランティアで教えるというものだそうです。
2008年8月から、市内のエムボ イ・ミリン地区のファヴェーラ(貧民窟)に隣接する州立学校で5〜7歳の子どもを対 象に無料教室を開講、「強力なスポンサーがつけば、さらに教室を開いて本当に必要と される15〜16歳の青少年を助けることができるはず」と目を輝かせています。

『PROJETO KIÀI(気合いプロジェクト)』のメンバー

ヴァニアさんから日本の皆さんへ

石井ヴァニア幸恵さん

「2年半の柔道留学の間、日本でいろいろな人に支えられ、きつい練習に耐えることが できたからこそ、今の自分があると思っています。本当にありがとう!
そして、柔道を 学んでいる人たちへ、私もケガに泣いたことがたくさんあって辛かったけど、今までが んばって続けてきました。だからみんなも、何があっても諦めないで。調子が良いときも 悪いときもあるけれど、自分を信じて前向きに歩いていって欲しいです。」

エスポルテ・クルーベ・ピニェイロス(Esporte Clube Pinheiros)

  • ■所在地:Rua Angelina Maffei Vita, 493 - Jardim Europa - Sao Paulo/SP- CEP: 01455- 902
  • ■連絡先:Central de Atendimento(受付)11-3598-9728(ポルトガル語・英語)
  • ■URL:http://www.ecp.org.br/

※記事の内容は2008年8月現在の情報となります。


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