男子66kg級 阿部一二三
2018年9月にアゼルバイジャンで行なわれた「バクー世界柔道選手権大会」男子66kg級で、見事大会二連覇を果たした阿部一二三選手。二連覇が決まった瞬間は「ホッとした」という阿部選手が、どんな気持ちで今大会に臨んだのか、2年後に迫った東京五輪(柔道)についての心境まで、様々なことを伺いました。
ホッとした大会二連覇
今回の2018年バクー世界選手権大会(以下、世界選手権)で優勝が決まったときは、ホッとしましたね。昨年の世界選手権で優勝したときは、まず「嬉しさ」と「喜び」が一番に出てきたのですが、今年は嬉しいという気持ちよりも、「安心した」気持ちが一番に出てきました。
2018年7月に出場したグランプリ・ザグレブでは、準々決勝で一本負けをしてしまったので、今回の世界選手権では、「自分の柔道、一本を取りに行く柔道をして、二連覇しよう」ということを、きちんと意識して気持ちを切り替えて試合に臨みました。
1回戦はシードで試合はありませんでしたが、2回戦、3回戦は一本勝ち、4回戦は技ありで優勢勝ち。いろんな選手が組ませてくれなかったり、腰を引いたりして投げられないようにしてくることが多く、一本が取れなかった試合もあったのですが、自分らしい柔道ができたと思っています。準々決勝のザンタラヤ選手(ウクライナ)との戦いでは、技もしっかり決めて勝利することができたので良かったですね。
一番の山は準決勝
世界選手権の前からシードの関係で、リオデジャネイロ五輪(柔道)銀メダリストのアンバウル選手(韓国)と準決勝で当たるというのは予測できていたので、そこが一番の山になると思っていました。
アンバウル選手と力の差はあまりないため、試合は意地と意地のぶつかり合いでした。さらに、お互いに指導が入ってからの延長戦。結果的に技ありを奪い勝つことができましたが、苦しい戦いでした。気持ちを切らさず集中して勝つことができたので、この試合でさらに成長することができたと思います。
この準決勝でかなりの体力を消耗してしまいましたが、決勝のセリクザノフ選手(カザフスタン)との対戦は、「あとひとつ、しっかり勝ちきろう」という気持ちで集中して戦いに臨むことができました。
大きかった妹の存在
私の決勝戦の前に妹(阿部詩選手)の優勝が決まりました。準決勝での疲労もあり、自分のことでいっぱいだったのですが、「妹が優勝できて良かった」とは思いましたね。そして「自分も頑張らないといけないな」と勇気付けられました。
妹は兄妹だからという理由ではなくて、一人の柔道家として尊敬しています。あの年齢で、しかもあのプレッシャーの中で勝ちきれるところは、本当にすごいことです。私が高校生3年生のときは絶対勝てなかったと思います。妹の優勝が決まって、兄として嬉しかったのはもちろんですが、決勝の試合の前に良い刺激となりましたね。
試合に勝つ秘訣とは
試合前に、井上康生監督やコーチの方々が気持ちを高めてくれる言葉をかけてくれました。私の周りには、自分を支えてくれる人達がたくさんいます。そのお陰で、技術面でも気持ちの面でも成長することができています。今回試合に勝つことができたのも、そのおかげです。
監督やコーチはもちろん、今までかかわった方々が、私が強くなるためにいろいろと考えてくれて、様々なアドバイスを下さいます。なので、今回の優勝は自分ひとりの力で勝ち取ったものではなくて、いろいろな人に支えられて勝ち取ったものだったと感じますね。試合に勝つことができるのは、日頃のトレーニングの結果などだけでなく、いろいろな人に支えてもらっているからこそだと思います。
東京五輪(柔道)を2年後に控えて
2年後の2020年には、東京五輪(柔道)を控えています。五輪で金メダルを取ることが目標です。さらにその先の五輪で連覇するというのも目標ですが、まずは東京五輪(柔道)で優勝しなければなりません。なので、今は東京五輪(柔道)の金メダルしか見ていないです。
そのためには、2018年の11月に開催されるグランドスラム・大阪でも優勝する必要もありますし、来年東京で行なわれる世界選手権で三連覇するなど、まずは目の前の目標を達成していくことが大切だと思っています。ひとつひとつの試合でしっかりと勝って、五輪に繋げていきたいです。
インタビュー:2018年10月