著名な柔道家インタビュー

野村豊和 ミュンヘン柔道競技(五輪)金メダリスト その3

1972年のミュンヘン柔道競技(五輪)、1973年世界柔道選手権ローザンヌ大会の金メダリストであり、五輪3連覇を成し遂げた野村忠宏選手の叔父にあたる野村豊和氏に、現在の柔道に対する思いや野村忠宏選手の子供時代などのお話を伺いました。

野村豊和氏

「勝つ柔道」よりも「きれいな柔道」を

野村豊和氏以前、天理大学でフランスの先生たちに柔道の指導をしましたが、力で柔道をしようとしている傾向がありました。

そうなると大きくて力の強い人には勝てません。そのときはできるだけ間合いを取ることと、回転する速さが勝負のポイントだと言いました。

中途半端に引きつけて回そうとすると、相手が大きい場合は回れず、逆に投げられてしまいます。だから相手と間合いを取って速く回転することを覚えることが大切です。

昔は天理柔道というと、できるだけ間合いを取って防御も攻撃もしやすい状態から速く回転して相手を投げるスタイルでした。そのほうが「きれいな柔道」が確立できます。

現代はどうしても「勝つ柔道」に重点が置かれ、「有効」ひとつでも勝ったらいいというようになり、柔道としての魅力が少し欠けている感じがします。これでは観戦している人はなぜ勝ったのか、分かりにくいですよね。だから勝つことだけに執着するのではなく、「きれいな柔道」を目指して欲しいと思います。

現代の柔道は、昔の柔道を知っている私たちが見ていても、あまり魅力のある柔道とは言えません。

細かいルールはないほうが柔道の魅力を引き出す

最近は国際、国内共にルールがいろいろと変わっております。極端なことを言うと私はルールはなくてもいいと思っています。柔道精神に反しない中できれいに投げたら一本、きれいでなかったら技ありでいいと思います。あまり細かくルールを作っていくと、審判をする人も誤審が増えると思います。

下半身を持つと反則負けになるルールですが、柔道家は右と左と下の三角をバランス良く攻めることによって、相手を攪乱(かくらん)するわけです。

例えば私の場合、右ばっかり攻めて左に切り返すなどをしますが、今の選手は、片方のみしかできない人がたくさんいます。右しかできない人が下を持ったら反則負けとなれば技の幅がとても狭くなり技が出せません。

できるだけルールの少ない格闘技、武道のほうが魅力ある柔道になると思います。

今後の柔道普及に向けて

野村豊和氏現在、日本柔道の危機が叫ばれております。

その原因の第一として、高校の柔道人口が以前の半数くらいに落ち込んでおり、優秀な先生がおられても、生徒がいないという状況となっていることです。何とかもう一度、子供たちに柔道への関心を持ってもらいたいですね。

そのために国際試合でもっと結果を出してもらうとか、昔みたいにアニメなど柔道番組のようなもので日本の武道精神を伝えながらもっと馴染みのあるようにアピールし、新しい柔道のイメージを作ってもらえればと思います。

もうひとつは、現役でなくてもシニアの人をもっと活用して指導や普及に工夫をしたほうが良いと思います。

平成24年度から中学校の体育の授業で武道が必修化となりますが、こうした授業での指導にもシニアの人は役に立つと思います。

苦しいとき程楽しいとき

私の好きな言葉は「楽しいと思える日まで苦労せよ」です。スポーツでも勉強でも苦しいと思う人はさぼったり逃げたりしますが、私は逆にできることの喜びを感じます。

柔道でも投げられているときのほうが楽しいかも知れません。何度も投げられても立ち向かっていくことに楽しい部分があるので、逆境でも心の持ち方次第で、向かっていけると思います。

本来は人生というのは苦しい時間より楽しい時間のほうが多いので、もっと逆境を楽しむ、苦しいことをしていても健康で柔道ができること、いろんなことにチャレンジできることを楽しいと思って生活しています。

理にかなった技の伝授が人を成長させる

私は小学校の頃から柔道を始め、練習が終わったあとに、親や先輩たちから技の指導を受けていました。同じように私は少年達に、理にかなった柔道ができるように指導してあげたいと考えています。

柔道は勝敗だけでなく、健康にも良く、精神を鍛えるためにも役立つスポーツです。勝てない子を激励し、将来を考えた上での技の完成度を高めてあげるように指導しています。理にかなった柔道をすることで、人は大きく成長しますし、将来きちんとした指導者にもなれると思います。

※2010年12月現在


柔道チャンネルでは、柔道部・日本柔道・国際柔道・世界柔道・柔道整復師・柔整専門学校・接骨院の関連情報がご覧頂けます。また、柔道大会情報や柔道家・選手紹介、柔道組織情報、柔道お役立ち情報など柔道に関する情報が満載です。

注目ワード