著名な柔道家インタビュー

  

小橋秀規1/2

全日本のコーチも務めるALSOK柔道部の小橋秀規監督に、日々の稽古に取り組む姿勢や、「世界」を目標に選手を育てるための指導法などについてお話を伺いました。

憧れの先輩から引き継いだ「監督」

憧れの先輩から引き継いだ「監督」

私は学生時代に、ALSOKの柔道衣を着て活躍する金野潤選手(現・日本大学柔道部監督、以下金野先生)に憧れて入社しました。長く現役を続けられた金野先生とは、同じ選手という立場で一緒に稽古をする機会にも恵まれ、本当にたくさんのことを教わりました。

その後、金野先生は現役を引退。アメリカ留学を経て、監督として戻られたのですが、しばらくして母校に帰られることになりました。そのタイミングが、私が現役を退く時期とほぼ重なり、監督にならないかと声を掛けて頂き、引き継ぐことになりました。

他の実業団チームの監督は、選手としても素晴らしい実績を持った方ばかりですから、最初に声を掛けて頂いたときは、「本当に自分で大丈夫なのか?」という不安な気持ちが強かったですね。しかし、その一方で、せっかく実業団チームの監督になれるチャンスを頂いたのだから、全力で取り組んでみたいという気持ちも強く感じました。

現役時代に実績を残せなかった分、形にとらわれず、柔道を深く学んで「他の監督に負けない指導者になってやろう」と。その気持ちは、今も強く持っています。

感謝の気持ちを忘れず、稽古に邁進

感謝の気持ちを忘れず、稽古に邁進

ALSOKには、創業者が残した、強く、正しく、温かい「武士の精神」と、何ごとにも常に感謝の気持ちを忘れない「ありがとうの心」という2つの言葉があり、柔道部としても大切にしています。

例えば、福岡で行なわれる全日本選抜柔道体重別選手権大会(以下、選抜体重別)のように、柔道の試合は日本各地で行なわれますが、どこに行っても各地域にある事業所の方たちが応援団を結成し、心からの応援で選手たちの背中を押して下さいます。勝っても負けても変わらず応援をして下さる社員の皆さんには、いつも頭が下がる思いでいっぱいです。

また、柔道部の長い歴史のなかで、柔道界に幅広いネットワークが築かれていることもALSOKの特長です。全日本柔道男子井上康生監督(以下、井上監督)をはじめ、大学、高校で指導者をされているOBの先輩方も多く、所属選手へアドバイスを頂けること、また選手のスカウト活動の部分でも、このネットワークは本当に心強い存在です。

歴代の先輩方が作ってくれた土壌や歴史への感謝の気持ち、また、社員の応援に支えられた素晴らしい環境があることへの感謝の気持ちを忘れずに日々の稽古に取り組み、畳の上でも、畳を下りても武士の精神を体現する、「強いALSOK柔道部」を継承していきたいと思っています。

レスリング部との交流

レスリング部との交流

環境に恵まれているという点では、ALSOKには同じ「世界」を舞台に戦うレスリング部があり、吉田沙保里さんや伊調馨さんらオリンピックの金メダリストと交流する機会があります。

彼女たちは現役の世界チャンピオン。常に「世界」を視野に入れて、高い意識を持って競技に取り組むトップアスリートが身近にいるという環境も、他の実業団チームにはない、ALSOK柔道部ならではの魅力だと思います。

先日も一緒に食事をさせてもらったのですが、田知本姉妹(・遥)が、吉田さん、伊調さんからいろいろな話を聞いていました。柔道でも前日計量制が導入されましたが、レスリングではずっと以前から行なわれていますし、調整法など具体的なアドバイスを頂いたようです。

お互いに「世界」を目指すアスリートとして、ある意味ではライバルでもある存在が近くにいるのは、本当にありがたいと思います。

「世界」を目標に努力を重ねる部員たち

「世界」を目標に努力を重ねる部員たち

現在、ALSOK柔道部には9名の選手が在籍し、今年は7名がリオデジャネイロ世界柔道選手権大会の最終選考会をかねた選抜体重別に、日本代表への可能性をかけて出場してくれました。

普段の稽古は、基本的に選手それぞれの母校をベースに行なっています。出社する者、大学院で学んでいる者、選手によって1日のスケジュールは違いますが、週に2度は全選手が集まって合同練習を行ない、各大学へ出稽古に回らせています。

それぞれ出身大学も違い、個性的なメンバーばかりなのですが、他のチームから「ALSOKはチームワークが良いね」と言われるように、皆、本当に仲が良いですね。選手の多くは日本代表クラスで、なかでも同じ100kg級の小林大輔と熊代佑輔は日本代表の座を争う関係でもあるのですが、互いに良いライバルとして刺激を受けながら稽古をしています。

こうしたチームの雰囲気は団体戦でもプラスに働くと思いますし、もちろん個々のレベルアップにも繋がっていると感じています。

目指すのは「そつのない柔道」

目指すのは「そつのない柔道」

指導で心掛けているのは、個々の選手の長所をしっかりと伸ばしていくこと。そして、所属チームで結果を残すことはもちろん、世界で戦えるレベルに引き上げて、日本代表の井上監督のもとに預けられればと考えています。

技術的には、立技から寝技への移行をスムーズに行なう「そつのない柔道」を意識しています。現役時代の井上監督や、ALSOKの現役選手で言えば中矢力福岡政章のような、立技でも寝技でもしっかりと一本が取れる柔道ですね。立技だけで寝技がおろそかになると、どうしても柔道が雑になってしまいますから、選手たちにも常に「立って一本、寝て一本が取れる選手になりなさい」と言っています。

今年の全日本柔道選手権大会で、小林は残念ながらベスト8に終わりましたが、寝技で2試合一本を取りました。ALSOK柔道部が目指すスタイルが、少しずつ浸透しているという実感はあります。これからも「そつのない柔道」を追い求めていきたいと思います。

インタビュー:2013年11月

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